「ほしのこえ」の特典映像「彼女と彼女の猫」

新海誠の出世作と言って良い「ほしのこえ」を取り上げると見せかけて、実はこのDVDに収録されている「彼女と彼女の猫」がメインだったりする。氏の作品の中で、実は一番好きな作品がこの「彼女と彼女の猫」なのだ。

都会で一人暮らしをする彼女、そして彼女の飼い猫の何気ない日々。彼女の生活を猫の視点で語る――というかかいま見る形だが、彼女と猫のふれあいの物語ではない。
猫の語りから伺える彼女の寂しさや、切ない痛み、猫と彼女の間にある暖かみがじんわりと伝わってくる良作なのだ。

4分半そこそこの尺の作品だから、大どんでん返しとか派手な演出とかはない。
だが、それがいい。

「都会の一風景」

そう言ってしまえる作品である。
だが、そう言い切ってしまってなお、心のどこかに切なさとともにほんのり暖かみが残る。淡々と流れていく音楽と絵と猫の語りが非常に心地よいのだ。

これが、後のこのDVDの本編「ほしのこえ」や「雲のむこう、約束の場所」に通じる、切ない物語の中にあるほんのりとした暖かみの原点なのだろう。

さて、新海誠の最新作「秒速5センチメートル」が、2007年早春に上映される。
3本の連作アニメーションで、こちらも非常に楽しみだ。