06/07チャンピオンズリーグ特集
不屈のイタリア魂、プレミア勢の躍進、中村俊輔のFK劇場・・・

■ACミラン名誉と誇りを取り戻すまでの物語

　2年前のクラブ史上最大の屈辱、そして失意のスタートとなった06/07シーズンの苦境から、ACミランはいかにして這い上がったのか。名誉の挽回と誇りを賭けた男たちの物語がここに登場！

　不屈のイタリア魂。そんな言葉がふさわしい。2006年前半、カルチョのあれこれがスキャンダルに揺れた。ところが、どん底のはずのイタリア代表がW杯で優勝。そのときの選手たちの言葉。

「俺たちは苦境のときほど強くなる」

　そして06/07シーズンが開幕。CLの話題はバルセロナやチェルシーなど派手なクラブに集中。スキャンダルの余波をうけ失意のスタートとなったACミランの優勝を予想する者は少なかった。

　カカ、ピルロ、セードルフらの個人技を武器にコツコツと勝ち星を拾い、迎えた決勝の舞台。相手はリバプール。2年前のトルコでの決勝。3-0からまさかの大逆転を喰らい、ビッグイヤーをビートルズの故郷に持ち去られた。イスタンブールでの忘れ物をアテネで取り戻せるのか。2007年5月23日、ホイッスルがアテネの夜を真っ二つに切り裂いた。

ACミラン 2-1 リバプール

　なに、ACミランは貫禄の勝利を収める。老獪インザーギの2得点。イスタンブールでの大失態とスキャンダルの失意を乗り越え、イタリア代表に続きまたもや不屈のイタリア魂、ACミランが通算7度目のチャンピオンズリーグ優勝を果たした。

　今大会、ミランの優勝で幕を閉じるも、名の知れたビッグクラブが集結したノックアウトステージで印象深いのはイングランド勢の躍進。リバプール、チェルシー、マンチェスターUとベスト4のうち3チームがプレミアのクラブだった。資金力のあるオーナーやTV放映権など、リーグ全体とチームに潤沢な香りを届ける風が、いまイングランドに向かっている証拠か。これもチャンピオンズでの成功には欠かせない条件。かつてスペイン勢やイタリア勢が元気だったころを思い返すならば、こうしたフットボールの栄枯盛衰に思いを巡らすのも、また楽しみのひとつ。

　そして日本人が忘れてはならないのが、グループステージでのセルティック中村俊輔の大活躍。マンチェスターU戦でのFK。しかも、2発。まるで時が止まったかのような美しい放物線は、フットボール母国の目の肥えたファンの記憶にも深く刻まれたはず。グラスゴーの“緑な”ファンと極東の日本人にとっては、孫の代まで語り継ぎたいほどのインパクトだった。

　いまやW杯よりもレベルの高い試合を繰り広げるチャンピオンズリーグ。最高のチームが集い、最高の選手たちが名誉と誇りをかけてピッチを駆ける。最高のプレーと最高のサポーター、つまり最高のフットボールがここにはある。07/08シーズンも開幕し、おさらいの意味をこめて、改めて昨年の激闘を振り返ってみてはいかがでしょうか。

UEFAチャンピオンズリーグ2006/2007 優勝への軌跡

サッカー