その歌声は舞い降りたひとひらの雪。
2005年7月リリースのシングル「花火まであとすこし」でデビュー以来、独自の存在感を放っているSNoWの1stアルバムが遂にリリースされた。 タイトルはその名も「初雪」だ。 2006年1月にアニメ「地獄少女」のオープニングテーマ「逆さまの蝶」のロングヒットで、一躍、その存在を世に知らしめた彼女。ナチュラルだけれども落ち着きを持った歌声とSNoWならではの作品の世界観、そしてミステリアスな佇まいが相まって、弱冠21歳という年齢にして既にしっかりとしたアーティスト性を確立しているのだ。 彼女の歌にはなぜだか孤独の匂いがする。だがそれは決して他者を拒絶するものではなくて、孤独の存在を認識した上で外に向かって相手と対峙して行こうとするもの。それ故に作品の中にSNoWの早熟な感性を感じずにはいられないのだ。 今回のアルバムは彼女が15歳の時から制作を始めたものなのだという。彼女と会ったその日、出来上がったばかりのサンプル盤を何度もそっと手に取っては、とても愛しそうに見つめている彼女の姿が印象的だった。 このアルバムは彼女が降らせる音の初雪だ。彼女の降らせた雪があなたの心に温かく溶けて行けばと思う。
◆プロフィール◆ '85年6月11日東京生まれ。双子座、A型。21歳。
現在、LAサンタモニカ・カレッジ在籍中。 5歳からLAで育ち、日本語と英語を自在に操る。洋邦問わず身近なヒットチャートの曲を口ずさむことから始まり、13歳頃から友達の作った曲に自作の詞をつけて歌い始めるようになる。16歳のとき、聴く者すべての心をとらえる素晴らしい声を買われて来日のチャンスを掴み、プロデューサーの紹介で知り合ったソングライター陣と共作でデモテープを作り始める。歌うことが楽しくて足を踏み入れたこの世界で、次第に表現することの難しさ、面白さを知る。 数年間のデモ制作期間を経て、現在はLAと日本を行き来しながら、レコーディングや曲作りに打ち込む日々を送る。「自分が伝えたいと思うことを納得のいくまで表現できる人を他に知らないから自分で歌っているし、その思いがある限りこれからもきっと歌い続けると思う」と彼女は言う。 好きなアーティストはアーニー・ディフランコ、イギー・ポップ、トーキング・ヘッズ、ジャック・ジョンソンなどで、最近はギターも習い始めた。特に「パンク・フォークの女王」アーニーは、詞の世界観も含めて尊敬する憧れの存在、という。音楽以外でも、写真やアート(絵)にも意欲的に取り組む幅広い才能をみせている。 '04年11月25日、「いちばん視点の低いクリスマス・ソング」"Yes"を、世界観の異なる英語バージョンとのカップリングでインディー・リリース。各地FM局や有線放送にて集中的にオンエアされ、注目を集める。'05年3月、自ら詞を手掛けた初期の未発表曲"Night Light "が、期待の新進アーティストばかりを集めた"HMV PLAYLIST 3"キャンペーンにピックアップされる。'05年7月、シングル「花火まであとすこし」にてソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズよりメジャー・デビュー決定。ギターの温かい音色に彩られ、キラリと煌くせつないメロディとヴォーカル、ひたむきな詞の世界は、遠い空から舞い降りる雪のように人々の心に降り積もっていく。 |
SNoW:曲を並べて行ってある意味シンプルに一つの作品という形になると、初めてこんな感じで進んで行くんだみたいな、そのことに対して何て言うんでしょう、「あ、もう出ちゃうんだ」みたいな、ちょっと焦りみたいなものも感じています(笑)。
――嬉しい感じはありますか?
SNoW:そうですね。嬉しい気持ちももちろんあるんですけど、何か不思議な気持ちというか、すごく複雑というか、何がどうなってるんだろうみたいな感じがあって、そういうものが一気にワーッと来てる感じなんです。
聴いてる人達はアルバムに入っている1曲、1曲を自分なりにストレートに受け止めて聴いて貰えたらとても嬉しいんですけど、自分としては全部の曲にいろんなエピソードだったり、想いだったり、その時の焦りだったり、いろんな思い出があるので、客観的にはあまり見れないというか、何がどうなって「初雪」になっちゃったの(笑)みたいな感じがすごくあるんです。
――お店とかに並んでるのを見たりするとまた違う気持ちになるかもしれないですよね。
SNoW:かもしれないですね。
――では自分の中で出来上がってみて、このアルバム「初雪」はどんな作品に仕上がったと思いますか?
SNoW:最初に16歳でレコーディングを始めた頃は初めてのこともたくさんあって、
どの曲もいつもフルでいろんなことをやっている感じで、自分がどういうことをしたいかとか、歌いたいかっていうことだけで、もういっぱいだったんです(笑)。
アルバムに収められている11曲もその中でもどんどん変化していて、いつからいつまでみたいな感覚が自分でもわからないくらい大きなものをアルバムにした感じなんですね。
だから自分の中ですごくハッキリとして捉まえることが出来ている想いやコンセプトがあってとかではなく、もう勝手に全部走ってるのをかき集めて、ハイ!集合!みたいな感じで(笑)、それで「初雪」としか言えないみたいな(笑)。
全体的なアルバムのテーマとか考えてタイトルを決めることが出来なくて、作品というよりは自分自身とか存在みたいなことでしか結びつかないんです。
――作品というよりも生のSNoWさんの気持ちとかがいっぱい詰まったものが一つになって今、アルバムとしてあるという感じなんですかね。
SNoW:常に自分がこういう気持ちだってわかっていたわけではないですけれど、自分の中だと気持ちという言葉が近いのかも。
それぞれの曲によって違いますが、勢いでガーッとやって形になった曲もあったりして、16歳から今までの作品っていう意味では結構長いですよね。
今後だとたぶんそんな余裕を持って作れないと思うんですけれど(笑)、次は26歳ですかみたいな(笑)。
――すごい先になっちゃう(笑)。
SNoW:そういう意味では一つ一つがその時その時を何とか捉まえるのに必死になってやっていた感じですね。
――一生懸命、捉まえて、何とか形にして作ってっていう感じだったんですね。
SNoW:そうですね。それをやって、そしたらまた次はどうしようとか、もっとこうしたいとかになって、例えば16歳の時作った歌を20歳の時に歌う時に、同じ曲でも詞を変えたりアレンジを変えたりとかよくやったりしていて、どんどん変わって行ってるので、そういう意味では一つ共通するものっていうのは言えないんですけれど、SNoWの歌をアルバム11曲「初雪」としてまとめて出して、こんな人ですって言うしかないみたいな感じですね(笑)。
――アルバムを聴かせて頂いてすごく統一感があるような印象を持ったんですね。
きっとそれってやっぱりSNoWさんが歌うことによって、SNoWさんならではの歌の世界観があるから、アルバムを通して聴くとSNoWさんのアルバムの世界観を感じられるんだと思うんですよね。
SNoW:ありがとうございます。
――では作品を作る時、楽曲だったり詞とかの中でこういうふうに作ろうとか考えて作ったりするタイプなんですか?
SNoW:気持ち良くスーッと出来るということはどの段階でも全然なくて(笑)、やっぱり煮詰めて作る感じが多いですね。
――結構、苦しむタイプ?
SNoW:そうですね。どの段階でも・・・・とか言って、さっきから苦しい感じになって来てますね(笑)。やっぱり割と気持ち良く歌ってて出来ちゃったとか、そういうことは今のところはそんなになくて、もちろん気持ち良いことを探したりとか、どういうのが聴いてて気持ち良いよとかは常にあっても、自然にそれが出るっていう感じは全然ないですね。
――印象としてパッて出来ちゃうタイプの方なのかなと思っていたんですが(笑)。
SNoW:そうですか?それは嬉しいです(笑)。
聴いててこれ大変だったんだろうなみたいなだと、聴いてる人が全然安らげないですよね(笑)。
やっぱり最終的に迷いのないものを出すために煮詰まったりとか、一番迷いなく出来ることを常に煮詰めて迷いながら探してるみたいな感じなんですよね。
――なるほど。それでは楽曲について2、3曲お伺いしようかと思うんですけれども、「逆さまの蝶」というのはSNoWさんの名前を一般的に知らしめる作品になったと思うんですよね。この曲っていうのはどういう気持ちで作られたんですか?
SNoW:曲自体は16歳の時に出来ていて、今、思い出したんですけど、考えてみたらその時に出来た5、6曲とかがあって、一番最初に出来た時にキター!みたいな感じが(笑)あったんですよね。
(一同笑)
SNoW:116歳の時に「Yes」が最初に出来た曲で、その次に出来た曲なんですけど、同じ人と一緒に共作をして作って、その時は曲があって、それから詞が付いてレコーディングをしてみたいなことをし出したのが、もっと後でシングルを出す時だったんです。
なので、詞は前は違う詞だったりもしたんですけど、ただずっとサビの部分は一緒で、曲が出来た時から♪In this Craziness,Uncertainty♪って英語の部分とかは全部あって、それは音でというか、仮歌とかを入れた時に出て来た言葉で、それを残してもらってそこからどうしようみたいな感じで詞を作りました。
今だとすごく難しいんですけど、その時には一人一人とかひとつの思いとか、それぞれみたいな言葉をどこまで残せるだろうかっていうことが、シンプルにサビで言いたいっていうのはずっとそこは思っていて、その中で孤独でも大切なものとか大切な人への想いみたいなことや、いくら想っても触れられないもの、想えば想うほど感じる孤独だったり、そういうことをみんな抱えてるのだとしたら、そういう想いをどれぐらい何かに出来るかというか、大切に出来るかとか、その時にそういうようなことを状況的にもすごく思っている時だったんですよね。
――今、お話を伺って、あぁ、そうかと思ったのが、SNoWさんが孤独っていうことわかった上で、人に対してとか繋がりとかを歌っていることが多い気がするんですよね。
SNoW:そうですよね。孤独ということを感じることを、本当はきっと受け止めたくないことなのかもしれないんですけど、だけどみんながそうだったとしたら、それは共通する一つの思いというか、繋がっていたいとか孤独が消せたら良いとか、それが一つの思いとなるんだとしたら、きっと一番、希望を持てることというか、孤独が悲しいことと感じないのかなみたいな気がするんです。
――自分だけじゃないと思うと、感じ方もまたちょっと違いますよね。
SNoW:うん、常に孤独を感じてると言うと何だか、全然その淋しいとかそういうことではないんですけど前に地獄少女の一のオープニングの映像で閻魔あいさんが金魚が水から出てバタバタ跳ねているのを近くで見てるシーンがあって、ちょっと怖いけどあのシーンと「逆さまの蝶」が重なる部分があって、例えば金魚っていつも水の中にいて、ペットだったとしても触ることが出来なくて、きっと回りの水をちゃんとキープすることで可愛がるということを、その映像を見た時に思って、可愛いから飼うんだけど、触れることが出来ないみたいなことをすごく思って、あの水から出して跳ねて苦しんでるのをジーッと見てる映像がすごく合ってるなぁと思ったんですよね
触れられないものに触れようとするのではなく、大切に出来ると良いのかなぁみたいな、何かそういうことがテーマというか・・・。
――何か言わんとしてることは伝わりますね。
SNoW:(笑)、余計難しくなっちゃいましたね。急に思い出しちゃって。
――でもあの歌とアニメの映像はすごく象徴的な感じでしたよね。この曲はSNoWさんの代表作と言っても過言ではないと思いますね。それではもう1曲、個人的に今回のアルバムで一番、お気に入りなのが「night light」なんですよ。これはSNoWさん自身が詞を手掛けているんですよね。やっぱりこれも自分が一人であるということを踏まえた上で他者とか外と繋がりを持ちたいという詞なのかなと思ったんですけれど、これはこんなどんな気持ちで書かれたんですか?
SNoW:これは16歳の時に書いた詞で、これはもうずーっとずーっとどうしようどうしようって言って、いろいろとグチャグチャやっていて、最後にこの詞が出て来た時は一気にワーッと出て来たんです。
だから具体的にあの時にこんなことを思っていたということは今では思い出せないんですけどね。
――頭で考えて作ってるんじゃなくて、理屈じゃなくて出て来てるものを出してるからなんでしょうね。それでは6曲目の「night light」についてお伺いしようと思うんですけれども。
SNoW:そうですね。ワーッと出して、何を書いたかもよくわからないまま一緒に制作していた人に見せて、譜割りとかいろいろとやっていて、通して歌ってみて改めてこんな曲なんだーみたいな感じだったんですよね(笑)。
ストレートでどこかちょっと弱くありたいというか、守られたい気持ちみたいなのが出たことはあまりなかったので、最初は何か自分らしくない感じもすごくしてたんですけど、だけど全然、迷ってる人ではないと思うんですけど、でもこれもそうですね。
側に居てくれるけど一人じゃんとか孤独じゃんってことじゃなくて、孤独だとしても側にいてくれるじゃんみたいな感じで(笑)、同じことだとしてもそういうふうに思えるようにありたいとか、思えることの幸せとか、あぁ幸せだっていう曲ではないんですけど、きっと全部そことの闘いみたいなものがきっと・・・、でも何だかストレートですよね、連れてってとか。
――この曲でとても印象的だったのが、歌詞の一節で♪途切れないような小さな声で 私だけを連れて行って♪というところだったんですけれど、“小さいけれども途切れないような ”ってそして“私だけを連れて行って”って謙虚なことをこの歌の主人公は言っているんですよね。だから舞い上がっている感じでもないし、おずおずと言っているのかなっていうふうに思ったんですよね。
SNoW:そうですね。ほんとに近くにいるっていうことを小さな声で聞こえる時って感じられるというか。
――小さな声でも聞こえるくらいの距離でって言うこと・・・。
SNoW:距離だったり、その距離を感じてるっていうか。
――あまりこうしようとか考えてなかったというお話でしたが、でも16歳とかでこういう詞を書くって、こうやって見ると早熟な女の子な気がしますよね。例えば好きな人とかのことを思ったりする時でも、自分があって、孤独っていうものが外側にあって、その向こうにいる人がまた近くに来てねって言っているのかなってというところで、やっぱり一歩引いて見ているところはあるのかなっていう。それは大人びているなぁと思いましたね。
SNoW:そうですね。そういうのは確かに共通していることかもしれないんですけど、ない振りは出来ないので、きっと全部出てるっていうだけだと思うんですけど、自分が一人じゃないよって、孤独を受け止めた上で言われるのと、それを受け止めてない状態で言われるのとでは、全然また意味が違うんだろうなみたいな。
――意外と見て見ぬ振りをする人が多いんだと思うんけど、みんなメールとか絶えず打ってるじゃないですか、それって繋がってたいからだと思うんですよね。
SNoW:そうですね、見て見ぬ振り。きっとそっちの方が孤独だったり淋しい空っぽな気持ちになるのかなとか、たぶんそれが苦手だからかもしれない(笑)。
そういうことと向き合ってないと・・・、向き合うっていうと何か問題みたいなんですけど、でも同じような孤独を感じてる人がいて、その人と何か繋がりたいと思えるようなことってあるのかなと思うんです。
――でも気づいてしまったんですよ、それはもう仕方がないと言ってしまったら悪い意味に聞こえてしまうかもしれないけど、見て見ぬ振りするより気づいてわかちゃった方が良くないです?
SNoW:そうですね、あるものだと思っていて、だからこそ素敵だなって思うことがほんとはいっぱいあって、ほんとはそれぞれ自分のこととか孤独を感じているのに、誰かを想ったり助け合ったりとか、理解したいっていう気持ちが強くなることとか、そこが面白いのかなみたいな、人であること、孤独であることとかっていうより、やっぱりもっと良くありたいとかいう願いみたいなものが、ちゃんとずっと続いているんだって、すごく思うんですけどね。
――なるほど、それは大切なことですよね。今回のアルバムってどんな人に聴いてもらいたいなと思いますか?
SNoW:作ってる時にそういうことがあるわけではないんですけど、もちろん出来るだけたくさんの人に聴いてもらいたいと思ったりしていて、でもすごくこんなことがあったら嬉しいなということは、例えば聴いて、勇気が少し出たとか、少し救われた気がしたとか、楽しい気持ちになったとか、少しでも何かを動かすことが出来たとしたら、もしこれをそんなことがあるとしたら、そういう人に届くと良いな思います。
――実際に届く日が楽しみですよね。では少しSNoWさんについてお話を伺おうと思うんですけれども、今、音楽以外とかでハマってるものは何かありますか?
SNoW:音楽以外で・・・鍋とか(笑)、何だろうなぁ・・・うーん、部屋を結構模様替えしたりとかしたんですよね。それぐらいしかないですけど(笑)、これと言ったものは・・・やっぱ鍋ですかね(笑)。
――おいしい鍋を食べた時にはblogにアップして頂くということで(笑)。
SNoW:(笑)。
――それでは自分の作品以外でお薦めのアルバムを1枚紹介して頂けますか?
SNoW:アーニー・ディフランコっていうアーティストがいるんですけど、アーニー・ディフランコの「EVOLVE」っていうアルバムです。
――はい、ではこちらがお薦めということで。
SNoW:そうですね。本当は全部がお薦めなんですけど(笑)、でも割とキャッチーというかそこまでマニアックじゃないかもしれない感じです。入りやすいかも。
――では今後、目標としている夢とか、こういうことをしてみたいというのはありますか?
直筆サイン入り写真 |
――いやいや妄想からですよ、最初は(笑)。じゃあ、ライブをやる、たくさんやる?大きいところでやる?どっちも?
SNoW:うーん、どっちもですね。
――じゃあ、大きいところでたくさん(笑)。
SNoW:あと、La.mamaでやってみたいですけど(笑)、そこでいっぱい好きなアーティストを見たので、いつかLa.mamaでやりたいなーみたいな(笑)。
――近々の夢はLa.mamaで(笑)。
SNoW:(笑)。
――では最後にファンのみなさんに向けてメッセージをお願いします。
SNoW:「初雪」、良いです、聴いて下さい。SNoWでした。
――ありがとうございました。
SNoW:ありがとうございました。
(Text by Takahashi)