その透き通る歌声は銀世界へ誘い。
2007年1月31日に湯川潮音の2nd ミニ・アルバム「雪のワルツ」がリリースされた。2006年6月にリリースされた1st ミニ・アルバム「紫陽花の庭」と対を成すこの作品は、「紫陽花の庭」の夏盤に対して冬盤という位置付けとなる。 アルバムのタイトルにもなっている1曲目「雪のワルツ」は、昭和前期から数々のCMソングやテレビ番組の主題歌などを世に送り出した、三木鶏郎の作品なのだという。 そして菅野よう子の作曲によるCMソングとなった「木漏れび」。難易度の高いことで有名な菅野よう子作品を、今回は彼女の手による詞を加えて、軽やかに歌いこなしている点にも注目だ。 時代性に捉われない普遍的なサウンドと、聴く者にホッとするような安心感を与える湯川潮音の歌声は、今の時代にこそ必要な気がするのだ。 温かな紅茶の湯気と共に「雪のワルツ」を聴いたら、きっと素敵な気持ちになれるだろう。
◆プロフィール◆ 1983年 東京生まれ。
小学校時代より東京少年少女合唱隊に所属、多くの海外公演などを経験する。2005年夏、永積タカシ、岸田繁からの楽曲提供を受け、『緑のアーチ/裸の王様』でメジャーデビュー。全国ロードショー公開された映画『リンダ リンダ リンダ』に出演し唄を披露した。 同映画のサントラを手がけたジェームズ・イハとの競作/プロデュースによる2nd. single『蝋燭を灯して』を経て、2006年1月にはメジャー1st.album『湯川潮音』を、そして6月には”夏盤”ともいえる1st. mini album『紫陽花の庭』を発表。 また、東野翠れんとの共著による写真とことばの交換日記『風花空心』の刊行も話題となった。 2007年1月には前作の対となる"冬盤”『雪のワルツ』を発表した。 日本語を大切にした歌詞を、美しい歌声で伝える新しいスタンダードとして、また、聖性と妖性、普遍性と革新性を兼ね備え、世代を超えた音楽を紡ぐシンガーソングライターの旗手として幅広い支持を受けている。 |
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コメント「雪のワルツ」★
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湯川:夏場に「紫陽花の庭」というミニ・アルバムを出した時に1年に2枚対になるようなミニ・アルバムを作りたいなというのが最初の構想で、必然的にその冬のアルバムということになったんですけど、この「雪のワルツ」という曲がタイトルになるとは思ってはいなかったです。
――そうなんですか、これは三木鶏郎さんという方のカバー曲なんですよね。この方の曲をカバーしようと思ったのはどういうところからなんですか?
湯川:丁度1年くらい前になると思うんですけれども、鶏郎さんのトリビュート・ライブというのがありまして、それに私がザ・ピーナッツさんの歌われた曲を唄わせて頂いたんです。
その前からもちろん鶏郎さんの音楽は、キリンレモンのコマーシャルの曲だったり、ナショナルの曲だったり、後はトムとジェリーとか、実は知ってるものが多かったんですよね。
――なるほど、そうなんですか。
湯川:そうなんです。本当にたくさんの有名な曲を書かれていて、でもトリビュート・ライブがある時まで鶏郎さん自身と音楽が繋がっていなかったんです。
その時に初めて知って、そこから自分が聴く音楽もずっと鶏郎さんのものばかりになって、丁度、冬盤は何か1曲カバーを入れたいというのは前々から思ってたんです。今、一番よく聴いている音楽って言ったらやっぱり鶏郎さんのものだから、ダメ元でお願いしてみようと思って、この曲を保存している事務所にお願いしたんです。
――全然違和感がないですよね。
湯川:そうですか(笑)。
――私もオリジナルというのは聴いたことがなかったんですけど、この曲は素敵な曲だなと思って、タイトル曲になったのもわかる気がしましたね。
湯川:ありがとうございます。
――今の季節にピッタリですよね。他にも5曲目に収録されている「木漏れび」は菅野よう子さんの作曲ですが、こちらはどのような感じで作られたんですか?
湯川:この曲は元々はCMの為にデモで歌っていた曲なんですけれども、最初はデモが送られて来た時に菅野よう子さんのラララ♪っていう言葉で歌われてて、その印象がすごく強かったんですね。
そして自分の言葉で歌いたいなっていうのは思っていて、最初はCMの尺だけしかなかったんですけど、1曲分に引き伸ばしてもらって自分で詞を付けさせてもらったんです。
――こちらはまさに菅野節という感じですよね。
湯川:そうですね。
――でもミニ・アルバムで曲数が少ない中にやっぱりフックな感じの曲になってますよね。
湯川:普段、自分の中では出ないメロディーの動きだったりするので、自分自身もそういう場合、曲から教えてもらうことが多くて刺激になりますね。
――そうですね、勉強になりますね。アルバムの曲の中で実は個人的に一番お気に入りな曲というのは実は3曲目の「おしゃべり婦人」なんですね。
湯川:あっ、そうですか。
――そうなんですよ。
湯川:ウフフフ。
――なんかちょっとラグタイム・ミュージックな感じですよね。
湯川:そうですね、はい。
――こちらはどういうふうな感じで作ろうと思ったのかなとか是非お伺いしたかったんですよ。
湯川:これはメロよりも先にイメージで、こういう人がいてこれに合う感じのメロディーを探して行った感じなんですけど。
――この歌に出て来る女性がニクめないタイプというか。
湯川:うんうん、そうですね。自分もこういうところがちょっとあったりするんですけど、人としてとても魅力的でイヤミじゃないサウンドにしたいなと思ったんです。
――このアレンジとこの曲が何とも言えず、ちょっとホッとする感じなんですよね。後は4曲目の「知らない顔」、こちらも印象的な歌詞だなと思っていて、こちらはどういうところで作ろうかなとかどんなサウンドにしようかなとか思ったんですか?
湯川:この曲は1曲ちょっと異質な感じにしたいなと思っていて、ドラムも入りますし、割とバンド・サウンドで一回みんなでパッとせーので録ってっていうロック的なやり方をしたんですけど、全体に何か滲んでいるような曖昧な気持ち、爆発する前の何かモヤモヤした感情っていうのが現れれば良いかなと思ったんです。
――聴かせて頂いて、どちらかと言うと前作というのは音もカラフルで華やかな感じなんですけど、こちらもっとピーンと糸が張った感じってというか、冬っていうところもあるのかなと思いつつ、その緊張感だったりピリッとしたところがまた心地良いというか、そういう印象はあったんですよね。ご自分で作って振り返ってみるとこのミニ・アルバムってどんな感じになったと思いますか?
湯川:冬っていう季節が自分はとっても好きで、何かこう強い憧れみたいなものがありまして、精神的にすごく深いところまで潜り込むような季節だからこそ、そういう世界を音で表現したいなっていうのは冬盤に対してずっと思ってたんです。
周りが雪で閉ざされていて何も見たり聞こえたり出来ないからこそ、膨らんで行く想いとか、知らない人への想いとか、どこか知らない国への想いとか、そういう音にしたかったですね。
――このアルバムは雪景色の中で聴いたらきっとまた違って聴こえるのかなっていう気がしますね。
湯川:そうですね。
――雪国の人も是非聴いてもらいたいですよね。
湯川:はい、是非!
――今回のミニ・アルバムの中で一番こめたかった想いはどんな想いですか?
湯川:どこまでも想像を膨らませて行くような要素になれば良いなというのは思いました。
今、実際やっぱり日本にいるとそんなに凍えるほど寒いっていうこともないじゃないですか、実際そういう季節が一年に一度あるっていうのは大事なことだと思うんですね。
本当に芯から冷たさを感じるという、そこを忘れないでいきたいなって思うんです。
――冷たい冬があるからその先の春が待ち遠しかったり、また魅力的に映るっていうのはありますよね。
湯川:そうですね。
――今回ってアルバムの制作の中で苦労した点とかはありますか?
湯川:うーん、歌に関してはやっぱり菅野さんの独特の音の飛び方とか、そういうところが体に入るまで時間が掛かったのと、鶏郎さんの曲に関しては原曲がやっぱり素晴らしかったので、カバーって言うとどうしてもそれに全く反するやり方で対抗して行くっていうのが主流だったり、それしかなかったりするんですけど、私は元の世界観にすべての要素がもう含まれていると思ったのでそれを崩し過ぎず、ちょっと靴を脱いでお邪魔しますっていうような気持ちでやりました。
――例えば知らないリスナーがこのアルバムを聴いて、原曲はどうなんだろう?って聴きたくなるかもしれない、そこでまた出会いもあるかもしれないし広がる感じですね。
湯川:はい、原曲は素晴らしいので。
――じゃあ、そちらも是非!
湯川:はい(笑)。
――いつも作品を作る上で大切にしていることとかはありますか?
湯川:やっぱり自分自身でいることと自分の言葉で自分の音で表現することは一番大事だなと思います。
――湯川さんと言えばやっぱり"歌"ということで、湯川さんにとって"歌を歌う"というのはどういうことなんですか?
湯川:うーん、そうですね。話すことと同じようなことですね。
――話す代わりに歌に乗せてみたいな。
湯川:そうですね、一つの言葉でも話すのと、音の動きが付くと印象が変わったりして、そういう遊びが面白いなと思うんです。
――それでは湯川さん自身について少しお伺いしようと思うんですけれども、一番影響を受けたアーティストというのはどのような方なんですか?
湯川:もう、ものすごくたくさんいてこの人!という人はいないんですけども、みなさんからちょっとずつ影響を受けて来ていると思うんです。
でも自分のその音楽の原点にあるのは合唱をずっと子供の頃から十年間二十歳までやってまして、その時にやっぱり一番大きい存在だった先生ですかね。
――そうなんですね。
湯川:はい。
――それもちょっぴり意外な感じですね。それでは湯川さん流の素敵な一日の過ごし方を教えて頂けますか?
湯川:まずちょっと遅めに起きて(笑)、紅茶を飲んで、ずっと溜まってた本とかを読んで、ちょっと場所に飽きたら、外を歩きながら本を読んだりして、そしてなんか行き着いた所に面白いものがあって、そうしている内に何となく人に会いたくなったら誰かを呼んで「いせや」に行く(笑)。
(一同笑)
湯川:あの、焼き鳥屋さんなんですけど(笑)、好きなんです。
――ちょっと後半からはキャラクターが変わる感じですね(笑)。
湯川:そして熱燗を飲みながらまた本を読むとか(笑)。
――でもなんかゆったりした感じで暮らす一日というのが。
湯川:そうですね、何かこう目的もなく心が動くままに身を任せるような一日が理想ではないかと思います(笑)。
――そうですね、確かに(笑)、ではこれはファンの方に真似して頂きたい感じですね。
湯川:はい、時計を見ないで(笑)。
――それではファンの方に向けてお薦めのアルバムというのを1枚紹介して頂けますか?
湯川:何にしようかな・・・3月にヴァシティ・バニヤンさんという方が日本に来るんですけど、その方の「ジャスト・アナザー・ダイアモンド・デイ」っていう。
――その方はどのような音楽の方なんですか?
湯川:遊牧民みたいな生活をしていて、昔、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーとキース・リチャーズの曲を歌っていて、シンプルなアルバムを1枚出したんですけど、それ以降、消息が途絶えていて、最近2枚目が出たんですね。
もう六十幾つかの方なんですけど、吹きかけるような吐息のような歌い方で。
――すごいですね、キャリアの中で2枚なんですね。
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――そちらも是非みなさんに聴いて頂きたいですね。
湯川:はい。
――では今後は音楽を通してどんなことを伝えて行きたいと思いますか?
湯川:伝えていきたいっていうと難しいんですけど、やっぱり根底にあるのは自分自身のためにやっていることなので、私の音を聴いて何かを感じてくださる方々がいるならば心からうれしいです。あとは、わたしのことを知らない人でも音楽を知っていてくださったりメロディーを口ずさんでもらえるような存在になれたら音楽をやっていてよかったなあと思います。
――では将来の夢とか何かありますか?
湯川:現実的な夢なんですけど、北欧とか東欧とかでフィールド・レコーディングをしたいです。
――何か似合いそうな気がしますね。
湯川:外で鳥の声とか入ったりして、みんなミュージシャンが気分の良いような所でパッと録れたら良いなと思ってます。
――それはすごい素敵なアルバムになりそうですね、楽しみですね。
湯川:はい。
――では最後にみなさんに向けてメッセージをお願いします。
湯川:こんにちは湯川潮音です。冬になれば毎年引っ張り出して来たくなるような1枚になったと思うので、是非長い間、側に置いて下さい。
――ありがとうございました。
湯川:ありがとうございました。
(Text by Takahashi)