多くのヴィジュアル系バンドや音楽シーンに多大な影響を与え、もはや大御所の風格すら漂うミュージシャン、Mana。自身のソロプロジェクトであるMoi
dix Mois(モワディスモワ)より、3月1日に、待望の新作『Beyond the Gate』がリリースされる。
今回の作品の中で最も重要な役割を果たしているのは、インタビュー中でMana自身も語っているとおり「Eternally Beyond」だろう。冒頭から叩きつけられる衝撃的なリズムに心を奪われ、Manaお得意のシンフォニックサウンドがうねる音の波となり全身を総毛立たせる。溢れる楽器の音、歌劇のごとく展開する和声の緩急。息つく暇などもうどこにもない。新たな衝撃と感動を、Manaは改めて提示してくれた。 もう1曲、注目していただきたいのは「unmoved」だ。これまでもライブでは好評を博し、音源化が待ち望まれていたあの楽曲が、新生Moi dix Moisのナンバーとしてさらに磨き抜かれ今作に収録。この楽曲はあらゆる意味で対比が面白い。冒頭のシンフォニックなパートを打ち破るかのように突如響き渡るギターサウンド、絶妙に絡み合うツインギター同士の激しい競演、より重厚さを増したドラマティックなサビと、その直後に繰り広げられるギターとドラムのへヴィーなプレイ。期待を裏切らない仕上がりだ。 初回生産限定盤には、全曲のインストゥルメンタルが収録されている。Manaの楽曲がインストゥルメンタルとしても高い完成度を誇ることは、ファンの皆様ならば既にご存知のはず。Manaのコンポーザーとしての腕前を純粋に堪能できる、またとない機会が訪れた。これを逃す理由はないだろう。なお通常盤には、16ページのブックレットが封入される。『Beyond the Gate』をより深く読み解くヒントが、ブックレットのアートワークにそっと隠されているかもしれない。 今後のMoi dix Moisの活動としては、3月11日にLIQUID ROOMでのファンクラブ限定イベント、Europe Tour 2006〜Beyond the Gate〜として独仏にてライブツアー、そして5月2日にはSHIBUYA-AXで行われるツアーファイナルが予定されている。 待ちに待った音源とともに、Manaは新生Moi dix Moisとしての活動を再開させた。アルバムタイトル『Beyond the Gate』が示す向こう側の世界へと、いよいよ扉は開かれる。
>> その他商品はこちら
★Moi dix Mois Official Web Site by Midi:Nette★
http://www.midi-nette.com/ ★Monologue†Theater - Mana's Personal Web Site★ http://www.mana-sama.com/ ★Moi-même-Moitié★ http://www.rakuten.co.jp/moi-meme-moitie/ ◆Moi dix Mois バイオグラフィー◆ ヴィジュアル系ロックバンドMALICE MIZERのリーダーとして前人未到のサウンドを開拓し、常に唯一無二の音楽性を提示し続けてきた孤高の音楽家、Mana。彼が音楽シーンに与えた影響は改めて語るまでもなく、シーンでManaの名を知らぬ者は誰もいないほど。しかしManaは、決して過去に胡坐をかかない。現在では自身のソロプロジェクト「Moi dix Mois」を率いて音楽活動を展開している。
古典と先鋭の融合を図りつつも、実験的要素を織り交ぜながら常に新たな境地を求め続けるMana。もはや彼は、マナ・プログレッシヴという一つの音楽ジャンルを確立したといっても過言ではないだろう。その独自性は海外からも高い評価を得ており、欧米を中心として多くのファンを獲得している。音楽以外では、「エレガントゴシックロリータ」を提唱した第一人者として、アパレルレーベル「Moi-même-Moitié」をプロデュース中。今後の活動がますます期待される。 |
Mana:1年半ですか。
――1年半も経ったという意識はされましたか?
Mana:いえ、この1年半はライブもあったり、ヨーロッパに行ったりとかしていましたので。『Pageant』をリリースした後にヨーロッパに行って、東京でもファイナルをやりつつ。その後にヨーロッパライブのDVDもリリースしたので、そこまで空いたっていう実感はなかったんですが。
でも確かにCDとしては、結構空いていますよね。
――その待ちに待った新作『Beyond the Gate』ですが、どのような感じに仕上がりましたか。
Mana:僕の中でも新しい手法を使いました。実験的でありつつも、自分の一番得意な、シンフォニックでクラシックな部分も押さえつつ、それが融合した形にはなったと思います。
――各楽曲の構想を練る際に、作品やそれぞれの曲の全体像は一度に見えたのでしょうか。
Mana:今回、最初にイメージしていたものっていうのが、とにかく今までとは違うものを作りたいっていう意識がすごくあったんですよ。ヴォーカルが変わるっていうこともありましたし。だから今までにないものをやってみたいと思って、デジタル音も軸にしたものを最初作ったりもしたんです。
ただ、やっぱり新たなスタートですし、自分の中から自然と湧きあがる感情で曲を作りたいっていう意識で作り始めたので、最初の構想とはちょっと変わりました。ただ、最初のコンセプトと自分の湧きあがる感情が、ミックスした形にはなりましたね。
――ジャケット写真のアートワークのコンセプトやテーマについて教えてください。
Mana:(CDを手に取りながら)ジャケット写真ですか。これはですね、コンセプトやテーマはそんなに深くは言えないんですが。でも『Beyond the Gate』っていうタイトルとリンクはしているんです。Gateイコール扉っていう意味ではありつつも、ここから、入り口的なものを感じてもらいたいんですよ。
――ジャケット写真の、血の海から出てきている無数の手はどういったことを表しているのでしょうか。
Mana:これも大きく分けると二通りの解釈があるんですが、これは……。「なぜ、この血の海で十字架にかけられているのか」っていうのは、やっぱり曲を聞きながら想像してもらいたいところがありますね。
――今回の作品では、曲を先に作られてから、サポートメンバーの方が決まったのでしょうか。
Mana: そうです。2005年4月のMoi dix Moisツアーファイナルが終わってから、メンバーがどういう人になるかは分からないとしても、曲は作り始めましたね。その時点ではヴォーカルがまだ決まっていなかったんですよ。
でも何かしら作品は作り続けたいっていう意識はあったので、曲だけは作っていました。そして2005年の秋ぐらいに、今回加わってくれるヴォーカルに出会えまして。
楽曲ともうまくマッチして、今回こういう作品を作ることができ、ライブもできる状況になったという感じです。
――サポートメンバーとして加入されたヴォーカルSethさんとの、出会いから加入までのいきさつについて教えてください。
Mana:元々、実はもう5〜6年前から知っている人で、彼も普通にいろいろバンドをやっていたんですよ。あるとき、歌ってもらったらどうなんだろうって思って、彼を呼んで歌を合わせてみたところ、Moi
dix Moisの楽曲にすごくはまったんですよね。
それで、じゃあ今回プロジェクトに参加してもらおうかなと思ったわけです。
――Mana様の人脈で見つけられたということなのですね。
Mana:そうです。
――サポートメンバーには、ヴォーカルのSethさんとギターのKさんがいらっしゃいますが、どうやって楽曲の意思やコンセプトを共有して演奏されるのでしょうか。
Mana:基本的には僕がもう全部、作詞、作曲、アレンジを根本的にやっているんですよ。それを各メンバーに、テーマとかを伝えて、演奏してもらったり歌ってもらったりっていう形ですね。ジャムセッションか何か生まれるっていうような形態ではないです。
――SEの「The other side in blood」ですが、この“blood”という言葉に、何か深い意味が込められているような気がするのですが。
Mana:まぁ、そうですね。今回のこの血の海が、その全てを、物語っている気がしますよね。
――サウンド面で重点を置いた部分はありますか。
Mana:重点ですか。今回は、ギターのミュート具合でしょうか。
――ミュート具合……。
Mana:ふふ(笑)。
――ギターの、ミュート具合ですか?(笑)
Mana:はい(笑)。割と今までのMoi dix Moisの作品って、シンセをメインで楽曲を作っていた部分が大きいんですよ。で、それに対してギターをバッキング(※註1)としてアレンジしていたので、今までの楽曲ってギターを際立たせるっていう意識ではなかったんです。
ちょっと壁を作るみたいな形で、いわゆる普通のバンドが合間を埋めるためにシンセパッド(※註2)とかを使う――って分かります? 分かんないですかね……。
――すみません(笑)。
Mana:(笑)。じゃあ……まぁ、シンセをメインに作っていたんですね。今回は曲にもよるんですが、特に「Vain」と「unmoved」はギターからも曲を作っているんですよ。
だからギターのエッヂをどう立てるかっていうところで、ミュート(※註3)と、技っていうほどでもないんですけどピッキングハーモニクス(※註4)っていう奏法があるんですが、そういうものをメインとしてよりヘヴィーにギターを収録したところが、前回の作品とは違うところではないかなと。
――今回の作品にはデスヴォイス(※註5)が使われていますが。
Mana:はい(笑)。
――あの(笑)、曲がデスヴォイスを求めるのですか。それともデスヴォイスが曲を求めるのですか。
Mana:いや、曲ですね。
――なるほど。これにはデスヴォイスが必要だと。
Mana:必要になってくる曲は、そうですね。
――Mana様は音楽を創作されるときに苦労するタイプですか。それともすぐに曲ができるタイプですか。
Mana:これはー……曲によって半々ですね。悩む曲はもう永遠に悩み続けるし、意外とすんなりできる曲は、ほんと1日2日でできたりとかっていう。できない曲は1ヶ月2ヶ月かかったりとか。僕の楽曲にはいろんなタイプがありますが、特にシンフォニック系の曲はすごく悩みます。でも曲によってはシンフォニック系の中でもすんなりいく曲もあるし、うーん、一概には言えないですね。
ただ根本的には結構悩んでます。特に、チェンバロ(※註6)だったりとか、2本でLR(※註7)で振ったハーモニー(※註8)とかは生み出すのにすごい悩んで。ハーモニーって言うとハモリと混同されそうですが、違うものです。
例えばLRで2本のチェンバロが入った場合、2本ともバラバラの動きをさせるんですよ。その場合、ハーモニーって1つの主線があって、それに3度とか5度(※註9)とかつけていくっていうスタイルがあるんですが、それとは関係なく、どっちもLRが主メロになるんですよ。
だからその2本の主メロをどう調和させていくかっていうところが、一番頭を悩ませるとこです。
――それは難しいですよね。主役が二人いるわけですからね。
Mana:はい、そうです。
――今回、最も制作に時間を費やした楽曲はどちらになりますか。
Mana:えーっ、どれだろう……。でも2曲目の「Eternally Beyond」が、僕の中では最も悩んだ楽曲です。原曲は割と早めにできるんですが、アレンジにすごく悩みます。
――「Eternally Beyond」にもシンフォニックさはありますよね。というか今回の作品の中では、一番強いような気が。
Mana:そうですね。はい。
――やっぱりそういう要素があると悩まれますか。
Mana:悩みますね。「Eternally Beyond」は楽器が多いんです。実は一番使われているんですよ。ぱっと聞くと分からないかもしれないんですが、いろんなところで――例えばドラムの後ろにティンパニが鳴っていたりとか、合わせシンバル(※註10)があったりとか――細かいところに実はいろんな楽器が使われていて、それのアンサンブルを考えるのに一番時間がかかりますね。
だから逆にギターメインで作っている曲っていうのは、やっぱりギターを軸に作る分、アレンジ面ではシンフォニック系よりは早いですね。
――最も鍵となる楽曲はどれですか。
Mana:鍵はやっぱり、2曲目の「Eternally Beyond」になります。ポイントは、タイトルに“Beyond”が入っていて、アルバムタイトルにも“Beyond”が入っていて。その共通点を見てもらえれば、この曲が一番重要だというのは分かってもらえるんじゃないだろうかと。
――「Eternally Beyond」を完成させたあとは、どんなお気持ちでしたか。
Mana:これを完成させたからこそ、次に進めるなっていう。この曲が、実は今回のアルバムの中で一番あとにできた曲なんですよ。自分の感情で曲を作ったときに「Eternally Beyond」が生まれて、この曲ができたとき、やっと今回のアルバムが完成したっていう喜びに満ちました。
――Mana様にとっても、鍵となる曲ではあったと。
Mana:はい、そうですね。僕の目指している一つの形っていうのが、美しさと激しさと、シンフォニックな部分とドラマティックな部分の融合なんです。今回のアルバムの中では、「Eternally Beyond」にそれが一番表現されているんじゃないかと思います。
――初回生産限定盤には各曲のインストゥルメンタルが収録されていますが、インスト版も収録されることになったのはなぜですか。
Mana:実は、今まで僕の作品に対して、インスト版を聞きたいというファンのみんなの要望が強かったんです。それも知っていたし、あとは僕も、歌が入ったバージョンは好きは好きなんですけど、歌によって消される音とかも少なからず出てくるんですよ。だからそういった楽曲の原形を忠実に聞いてもらいたいっていう、コンポーザーとしての欲求もちょっとあるので。
――確かにインストゥルメンタルですと、楽器の一つ一つの音がしっかりと聞こえますよね。
Mana:そうなんです。
――純粋に曲の展開を追えたり、それで新たな発見があったり。
Mana:そうです。だから両方聞き比べてみてほしいですよね。インストを聴くと、意外と、このバッキング(※註11)にこういう歌メロが乗っているんだっていう発見もできると思うんですよ。歌のメロディが聞こえてくるものだと、当たり前のようにメロディが最初に耳に入ってきて、それを追ってしまうので、バックって聞き取る意識があまり芽生えないじゃないですか。
だからメロディを追うだけではなくて、楽曲それ自体からも、その楽曲の持つイメージを感じ取ってもらいたいんです。
――「Deflower」の音もMana様らしいなと思ったのですが。今お話されたこともそうですけれど、鐘の音と女性コーラスも、インストを聴くと際立って聞こえてきました。
Mana:はい。
――それから古楽器なのでしょうか、2ndアルバム『NOCTURNAL OPERA』の「vestige」で使われた楽器と同じ音が。
Mana:あぁ、チェンバロですか。またの名をハープシコードといいますが。
――はい。「Deflower」には、そのチェンバロの音も聞こえてきました。Mana様の楽曲にチェンバロが使われることって多いですよね。
Mana:そうですね。今までは結構使っていたんですが、今回はこの曲がメインです。他の曲には多少は入っているんですけど、今回は今までよりも少な目かもしれないですね。以前は、やっぱりチェンバロとパイプオルガンはどうしても使いたいっていう意識がすごく強かったんですけど。
――そうですよね。今までの作品ではかなり多用されていて。
Mana:以前はそうだったんですが、今回は各楽曲の色をどう出すかっていうところが僕の中では一番の鍵でした。なので、その楽曲に合う音色を選んでいくっていうことで、こういったバランスになったわけです。だから今回の作品は、各楽曲がだいぶ際立ってきているんではないかと思います。
――「unmoved」についてお伺いします。大筋ではアレンジも変えず、歌詞もそのままで、既存の楽曲を別のヴォーカルで音源化するというのは、Mana様のキャリアの中でもあまりないことだと思うのですが、今回その辺について特に意識されたことはありますか。
Mana:「unmoved」は前の時点である程度は完成されていたので、それにどう肉付けしていくかっていう感じではありましたが。そうですね……うーん、確かにそうですね、Moi dix Moisの中でも、それ以前でもやっていないことですし、この曲だけですよね。
――はい。Mana様のこれまでの作品や活動を改めて精密に辿っていくと、似たようなことは何度かされているのですが。しかしアレンジも特に変えず歌詞もそのままで、別ヴォーカルでの音源化というのは、初の試みではないかと気づきまして。
Mana:なるほど。でも実は、あまり聞こえてこない隠されたハーモニーとか、いろんなことが以前の「unmoved」と比べて変わってはいるんです。ギターのアレンジとかも多少は変わっていたりします。特にサビに、メロディギターが入ったのが大きく違うところではあると思うんですが。歌のメロディも前の時点で僕の中では完成していたので、以前の「unmoved」の基本は押さえつつ、よりパワーアップした感じです。「unmoved」は、今回で完成ですね。
――最後を飾る曲として、SEではなく一つの楽曲「The other side of the door」を持ってきたのはなぜですか。
Mana:これはですね、1曲目の「The other side in blood」との関連はかなり強い楽曲で。1曲目が、わりと古典的な映画のサントラみたいに始まるのに対して、その最後の楽曲は、古典なものとデジタルなものを融合させてみたいっていう欲求がすごく出て、今回そういった楽曲にしたんです。
――『Beyond the Gate』のGateと、「The other side of the door」のdoorというのは、それぞれ何を意味するのでしょうか。
Mana:“Gate”は、実は僕の中では幅広く捉えているんですよ。だから“door”はドアなんですが、“Gate”は扉の意味もあるし、例えば心の扉だったりとか、物質的な扉ではないものも指しているんです。
――作詞の際にこだわったところはありますか。
Mana:そうですね、一番こだわったのは……「Deflower」のサビかな。これって2本の歌詞があって、それぞれの歌詞が実は重なっているんですよ。主メロが2つ重なっているっていう独特な方法なんですが。その2本の別々の歌詞が、同じ時間軸で重なることと、別々になることによって、意味が少し変わってくるっていう二重構造に実は作っているんです。
そこが僕の中で、作詞の面では一番の新しい試みであったという。
――今回の作品では英語の歌詞が多いのですが、なぜですか。
Mana:「deus ex machina」とか「Vain」とかに英語が多いと思うんですけど、これは単純に、僕が楽曲を聞いたときのイメージなんですよ。曲を作ったとき、自分の中でこの曲は英語が聞こえてくるとか、日本語が聞こえてくるっていうふうに見えてくるので。そういう自然なものなんです。
――では特に意図されたわけではなく、曲が求めてきたと。
Mana:そういうことです。
――「deus ex machina」というのは、ラテン語で「機械仕掛けの神」という意味でしょうか。
Mana:はい、そうです。
――「deus ex machina」って、結構有名なフレーズですよね。
Mana:そうですね。でもラテン語がどうのこうのっていうのは、特にないんですが。ただ「deus ex machina」という言葉の響きが良くて、あとはその意味を皮肉に使いたかった部分があったんです。
――3月はMana様の誕生月ですが、この月に新生Moi dix Moisを始動させることについては、何か意図されるところはあるのでしょうか。
Mana:いや、できるだけ早く活動は再開したいなと思っていました。今回のアルバムもできるだけ早くみんなに作品を聞いてもらいたいっていうのもあって。
――では、特に3月を狙ったわけではないのですね。
Mana:そうなんです。まぁ、これはある意味運命なのかもしれないですよね。偶然にもうまく、重なったという。
――今回はミニアルバムという形でのリリースとなりましたが、Moi dix Moisとしては、ミニアルバムは初めてですよね。
Mana:そうです。
――シングルやアルバムではなく、ミニアルバムとなったのはなぜなのでしょうか。
Mana:やっぱり活動がちょっと空いてしまったので、次の作品をなるべく早い時期に出したいっていう思いがあって。シングルの場合だと2曲とかになってしまったりするので、楽曲のイメージがどうしても偏ってしまうんですよ。今回いろんなバリエーションがある楽曲を一番早い時期に出すっていう形にするには――ミニっていうよりもミディアムアルバムなんですが――こういう形が一番いいんじゃないかなということです。
――Mana様は急がれていたのですね。
Mana:そうですね。早くみんなに新しいサウンドを聞いてもらいたいっていう欲求だったので。
――Mana様には、しっかりと準備してから作って発表するというイメージを抱いていましたので、意外でした。
Mana:いや、いつも結構、焦ってますよ(笑)。
――そうなのですか(笑)。
Mana:はい。最後の最後までアレンジに悩んでいますからね。レコーディングの最中でもアレンジ中なんですよ。アレンジってどんどん出てくるので。もちろんレコーディング前に終わらせておくのが基本ではあるんですが、レコーディングしている最中に――例えば爆音で、でっかいスピーカーで聞いたときの印象によって――新しいアレンジが生まれたりとか、環境によってアレンジが見えてきたりするんですよ。
レコーディングをやりながら「あっ、こうしたほうがいいんじゃないかな」っていう新しいアレンジが見えてきたりするので。だからレコーディング中も、かなりばたばたしています。
――Moi dix Moisがツインギターの編成となってからは、初の音源制作ですよね。
Mana:あぁ、そうですね。確かにそうです。
――レコーディングはいかがでしたか。
Mana:レコーディングは、ギターの、ツインの音作りに結構時間がかかりました。それぞれのギターの個性を出しつつも、かけ離れていてはいけないので、そのへんのバランスは大変でしたし、難しかったですね。今までは僕が一人で全部アルバムを作っていたので、音色の振り分けかたとかピッキングのニュアンスとかっていうのは自分で操れていたんですが。
今回はKくんも参加していて、ピッキングの強弱やニュアンスを合わせないといけないので、その辺は大変だったんじゃないかなと思います。
――「unmoved」は、ツインギターならではのサウンドですよね。
Mana:そうですね。これツインギターでないと成り立たないですからね。
――この曲も結構、ご苦労されたのでしょうか。
Mana:はい。この「unmoved」が、一番音色に苦労した感じです。楽曲の頭にギターのみで出てくるので、ギターの音色が一番耳に飛び込んでくるっていうところで、そこの微調整にはすごい時間がかかりました。
――ファンクラブ会員限定のライブが3月11日に予定されていますが、ライブに向けての意気込みを聞かせてください。
Mana:ライブは、もう1年ぶりに近いので。ほんと久々なので、すっごく楽しみですね。僕はライブが好きなので。レコーディングよりライブが好きなタイプなんです。
――各所でのインタビューなどを拝見しますと、Mana様は曲を作るのが好きという印象が強いのですが。
Mana:うーん、なるほど(笑)。でも曲を作るのは好きなんですが、僕は実はエンジニアタイプではないんですよ。自分の曲を調整していくのは、好きは好きなんですけど。やっぱりライブで自分のパワーを空間にぶつけるほうが、僕の性分に合っているっていう。
僕、じっとしていられないタイプなんで。レコーディングでずっと、毎日毎日同じ席でちびちびやるっていうのは、耐えられない部分が(笑)。まあ自分の楽曲が完成していくさまを見るのはすごい好きなので、嫌いではないんですが(笑)、暴れまわるほうが好きです。
――なるほど(笑)。楽曲制作で溜まった鬱憤をライブにぶつけると。
Mana:はい。ライブでもう、はじけたいと思いますね。
――では次のライブは、とても楽しみですね。
Mana:えぇ、もう。
――新生Moi dix Moisとしての初のライブを、ファンクラブ会員限定とされたのはなぜなのでしょうか。
Mana:それは、ファンのみんなが待ってくれていますし、僕を支えてくれている大切な人たちなので。まずはその人たちに向けて、お披露目をしたいなと思いました。
――何かサプライズになるようなことはありますか。
Mana:やっぱりファンクラブ限定イベントってことで、普通のライブではないものはちょっと考えています。ファンクラブならではのイベントだなと思わせる部分は、少なからずやるつもりです。とはいえ、今回は基本的にはライブがメインです。
――Moi dix Moisの以前の楽曲は、今後もライブで演奏されるのでしょうか。
Mana:以前の楽曲も次のライブではやっていくんですが、楽曲によってはアレンジが変わっていたりすると思います。
――『Beyond the Gate』に関連する一つのキーワードとして、フライヤーに「怖いほどに美しい 向こう側の世界」というフレーズが掲載されていますが、「向こう側の世界」というのはどういう世界なのでしょうか。
Mana:これは、行ける人と行けない人はだいぶ出てくると思うんですが。それは自分の中の一つの固定観念とか、そういうものを捨てていかないと行けないので。そういう固定観念をずっと持っている人は、向こう側の世界を見ることはできないと思います。
僕の活動として、固定観念を崩していきたいっていうのが常に大きなテーマなので。
自分の固定観念だけで物事を見てほしくはないんです。今回は特に再スタートなので、僕の過去だったりとか、自分の過去だったりっていうものにずっと縛られては、次の世界は見られないっていう。
――では今回の作品をしっかりと聞いて、ライブに参加すれば、行けるのでしょうか。
Mana:行けると思います。
――連れていってくださるのでしょうか。
Mana:はい、連れていきますが……でももし行きたいのであれば、自らもこの血の海を渡る勇気を持ってもらわないとだめですからね。その勇気があれば僕は、引っ張っていきます。
――楽しみです。今回の新作に話を戻しますが、全体としては1stアルバム『Dix infernal』のほうに方向性が近いなと思ったのですが。
Mana:なるほど。
――Mana様らしい音と、新しい試みが一緒に入っていて、コンセプトフリーな感じに聞こえました。
Mana:確かにそれはあるかもしれない。2ndアルバム『NOCTURNAL OPERA』は、もうコンセプトありきで作ったアルバムだったので。歌詞だったりとか、そういうものも全部、ストーリーを書いたのですが。今回はストーリーっていうよりも自分の思いが強く現れているので、そういう点では1stとは近いかもしれないです。
――新生Moi dix Moisとして、今後はどのようなスタイルを提示してゆきたいと思いますか。
Mana:基本的にMoi dix Moisは僕のソロプロジェクトなので、楽曲の世界に合わせて、その都度合うメンバー編成にしていきたいっていうのはあるんですよ。Moi dix Moisはロックであるとは思うんですが、そのロックの枠には囚われずに。例えばドラム、ベース、ギターっていうロックの基本的な楽器を使ってライブをやっているんですが、それ以外の楽器もライブで交えていったりっていうことも、この先考えています。
――ではいろいろと、既存の枠に囚われず、自由にと。
Mana:はい。そういうふうにやっていければいいかなとは、思っていますね。
――先は見えていますか。
Mana:先ですか。そうですね、今回のアルバムで、僕が目指しているものはだいぶ凝縮できたんではないかと思うんですが。サウンドとしては、激しくて美しくて、ドラマティックであるっていうものは、この先ずっと追及してゆきたい。
――そこが基本、と。
Mana:そう、そこは基本です。僕、楽曲を聞いて、泣きたいんですよ。感動で泣きたい。だからそこらへんは突き詰めていきたいですね。
――ご自身で作っていく音で、自分自身も感動してゆきたいということなのですね。
Mana:はい、そうです。僕は世の中にある曲で満足していないので。世の中にないからこそ、自分で、自分のいっちばん理想である音楽を作っていきたい。まぁ、僕が一番ファンみたいなものですよ。
――Mana様自身が、Mana様の第一のファンであると。
Mana:そうです。僕を感動させるために作っているようなものです、ある意味(笑)。だから僕が感動しなければ、世に発表しても意味がないですね。
――3月11日にファンクラブ限定ライブが恵比寿LIQUID ROOMで行われますが、その後のご予定は。
Mana:Moi dix Mois Europe Tour 2006〜Beyond the Gate〜のライブが3月17日に仏パリで、19日に独ベルリンで行われます。そしてそのツアーのファイナルが、5月2日にSHIBUYA-AXで行われます。
――ヨーロッパツアーは、今回は2回目になるのでしょうか。
Mana:ライブとしては、そうですね。
――ヨーロッパでのライブと日本でのライブに対するお気持ちには何か違いはありますか。
Mana:気持ちの面では、今は日本でやるのと一緒なんです。というのは、日本とヨーロッパでのライブの本数が同じくらいになっちゃっているので。日本でやるのも一年ぶりのライブなので、やっと会えたみたいな意識もあるし、ヨーロッパも同じく一年ぶりなのでやっと会えたっていう意識があるので、そういったライブに挑む意識っていうのは近いものがあるんですよね。
ヨーロッパの人たちは、実は男性が多いんですよ。男性のパワーがすごいんですよね。ほんと「ロックが好きだぜ」みたいな、そういったパワーがすごく強くて。日本だと特に、いわゆるヴィジュアル系と呼ばれるような化粧しているバンドだと、男性ってどうしても消極的になってしまうじゃないですか。でも向こうは、それがないんですよ。そういった男性のパワーをすごく感じるのが、かなり違うところですね。
――ヨーロッパのライブに男性が多いという点については、どう思われますか。
Mana:嬉しいです。だから日本の男性にも、もっとはじけてほしいんですけど。女性の割合のほうがまだ多いので、恥ずかしいのかもしれませんが。その辺日本でもどんどん同じような、半々の比率にしていければなと思います。
――今回はヨーロッパでも『Beyond the Gate』のヨーロッパ盤が流通するということで、ヨーロッパのファンのみなさんもしっかりと楽曲を聞き込んで、Mana様のライブに参加されると思うのですが。
Mana:はい。
――前回のヨーロッパツアーでも、2ndアルバム『NOCTURNAL OPERA』の曲は、海外ファンの方はしっかりと覚えていらしたと伺いました。
Mana:そうです。去年ライブに行ったときには、『NOCTURNAL OPERA』のヨーロッパ盤は出ていなかったにもかかわらず、みんな歌っていましたね。
――海外盤を出されるということに対しては、どういうお気持ちなのでしょうか。
Mana:いや、海外盤はやっぱり出していきたいですよね。海外からメールとか来るので、求められているものに対しては、出していきたい、手に取れる環境にしていきたいっていうのがあるので。海外盤はすごく必要だと思っています。
――今までも要望は寄せられていたのでしょうか。
Mana:はい、要望はかなり。大きい都市じゃないところだと手に入らないっていう声が、結構来るんです。小さい町なのかどうか分からないんですけど。だからなるべく多くの人に手にしてもらえる環境にしていきたいとは思いますけどね。今はネット環境がだいぶ整ってきたので、手に入りやすくはなったと思うんですが。
――Mana様は日本と同じくらいヨーロッパにも軸足を置かれて活動されているようにお見受けするのですが、海外版ファンクラブ会員にはアメリカの方が多いと伺いました。アメリカにライブをしに行かれるというお考えはありますか。
Mana:アメリカのほうへも、環境が整い次第ライブとかには行きたいですね。今はヨーロッパが2回目なので、ヨーロッパ贔屓っていう印象が強いのかもしれないんですけど(笑)。そういう意味ではなくて、ヨーロッパのほうが環境が整って、やりやすい状況になっているんですね。
エージェントというか良き理解者というか、パートナーが今ヨーロッパでは見つかっていて、ライブがすぐできる環境になっているんです。アメリカのほうでも、今はそういうパートナーを探している段階でありまして。うまくいいパートナーが見つかりさえすれば、積極的にライブに行ければいいなと考えています。
――国内の話なのですが。ツアーファイナルということで、5月2日にSHIBUYA-AXでライブが行われますよね。その後、日本国内でツアーをなさるお考えはありますか。
Mana:今それは考え中ですね。できる限り日本でも多くのライブをやっていきたいとは思っているので。
――「海外にばっかり行って、なんなの!」という声も聞こえてきたりするのですが(笑)。
Mana:なるほど(笑)。そうですね。今年はできる限り日本でやっていこうかなと思っています。
――それでは、ファンの皆様へ一言お願いします。
Mana:久々にライブで会えるのを楽しみにしています。暴れます。
――今回はありがとうございました。
Mana:ありがとうございました。
(Written and interviewed by Denno)