2006.05.31
〜SET LIST〜
- ザ・シャーペスト・ソーン
- フリーダム・フォー・ザ・スタリオン
- ホワット・ドゥー・ユー・ウォント・ディス・ガール・トゥー・ドゥー?
- ザ・リヴァー・イン・リヴァース
- アセンション・デイ
- フーズ・ゴナ・ヘルプ・ブラザー・ゲット・ファーザー?
- ニアラー・トゥ・ユー
- ワンダー・ウーマン
〜ENCORE〜
- インターナショナル・エコー
- ザ・グレイテスト・ラヴ
- イエス・ウィ・キャン
◆Elvis Costello OFFICIAL SITE
http://www.elviscostello.com/
◆中島美嘉 OFFICIAL SITE
http://www.mikanakashima.com/
ザ・リヴァー・イン・リヴァース [DVD付限定盤]
エルヴィス・コステロ&アラン・トゥーサン
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UKを代表するロックシンガー、エルヴィス・コステロとニューオリンズ音楽育ての親=アラン・トゥーサンが織り成すスーパー・プロジェクト! エルヴィス・コステロ書き下ろしの新曲、そしてアラン・トゥーサンお馴.....
アルバム
CD | 2006/05/27 |
2934円(税込)
製造中止(購入不可)
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ALL HANDS TOGETHER
中島美嘉
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前作「CRY NO MORE」を追従すべく、ブルースゆかりの地ニューオリンズに捧ぐアップナンバー。セカンドラインのリズムをテーマに、被災地ニューオリンズの悲しみを音楽で元気付けようとする中島美嘉の声は.....
シングル
CD | 2006/06/07 |
1282円(税込)
メーカー在庫あり:1-3日
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“音楽は言葉で説明するものではない、それぞれが実際に耳にし、感じ取るものだ”
どんなサウンドでどんな作品に仕上がっているのか、音楽を言葉にして説明する事は難しい。聴く者それぞれの感じ取り方は全く違うからである。だから、実際に己の耳と心で確かめて
欲しい、感じ取って欲しい・・・今回ばかりは、それをとても強く感じてしまうほどのショウだった。
エルヴィス・コステロとアラン・トゥーサンがタッグを組み完成させたアルバム
『ザ・リヴァー・イン・リヴァース』が5/27
に発売した。エルヴィス・コステロが書き下ろした新曲とアラン・トゥー・サンのヒット曲を中心に、全14曲が収録されている最新作が、この
『ザ・リヴァー・イン・リヴァース』である。エルヴィス・コステロとアラン・トゥーサンがそれぞれの来日公演目前に、5/31のみ、関係者のみを集め、品川のGLORIA CHAPELで二人のショウ・ケース・ライヴが行われた。MCを務めたのはピーター・バラカン。
“教会ですからMCと言うよりは本来は説教を行う場所ですが、このショウ・ケースの為のMCを務めさせて頂きたいと思います。”
と、静寂に包まれた中、厳かにショウが始まった。先ずはアラン・トゥーサンが中央通路を通り、拍手の中登場。ジャズの聖地でもあるニューオリンズが世界的に注目を集める
きっかけを作った人物と言っても過言ではない、とても偉大なるアーティストである。続いて登場したのは、特別ゲストとして、アラン・トゥーサンをフィーチャーした初のチャリティー・シングル
「ALL HANDS TOGETHER」を6/7に発売した中島美嘉である。ゴスペル隊をバックにバンドをしたがえ、アラン・ト
ゥーサンがピアノを弾き、
「ALL HANDS
TOGETHER」を披露。一度聴いたらサビ部分が脳裏から離れない、 実に心が躍る新曲である。哀しい事も辛い事も全てを前向きに変えてくれるのは人が生み出す音楽なのかも知れない・・・そう思う程に素晴らしい一曲だった。続いて、ルイ・アームストロ
ングの名曲である
「WHAT A WONDERFUL
WORLD」をカヴァー。中島美嘉のしっとりとした歌声とアラン・ト ゥーサンの優しいピアノの音色が教会中を響き渡らせていた。その二曲を披露し、中島美嘉はステージを後にした。
昨夏、カトリーナ・ハリケーンによって被災したニューオリンズで多くのものを失ったアラン・トゥーサンはトーク中にこう語っていた。
“カトリーナによってニューオリンズは全壊してしま
った。その所為でピアノや多くの大切なものを失ってしまい愕然としてしまった。苦難に襲われた時、人はどん底に堕ちるか、自分を引っ張りあげて前向きになるかどちらかしかないと思った
。色々な事が起こってしまったけれども、僕は前向きに進む事にしたんだ。そうしたらコステロとこのアルバムを作る事が出来たんだ。それは最も誇るべき事だと思っているよ。”様
々な苦難を乗り越えた人間が本物の笑顔で奏でるピアノの音色が、こんなにも人の心を揺さぶるとは思いもしなかった。少なくとも私の心を大きく揺さぶったのは事実である。人は、音楽
を聴いて感動に包まれる事はよくあるが、涙が自然にこぼれてしまう程の衝撃を与える事が出来るアーティストはそう多くは存在しないだろう。‘音楽’とは‘音を楽しむと書いて音楽’。世の中
では自分が意図しない悲痛な出来事が数多く起こっている。そんな現実が当たり前になってきた所為か、世の中には楽しい楽曲よりも哀しい楽曲が溢れかえっているようにも思える。が、
本当に苦難を乗り越えて来た人間が生み出すメロディーというものは、どんな人をも笑顔に変える事が出来る音楽なのかも知れない・・・そう改めて実感させられる様な表情を始終見せ
ていたのが、アラン・トゥーサンだったのである。
中島美嘉が二曲披露した後は、その日の主役であるエルヴィス・コステロが登場し、彼とアラン・トゥーサンによる二人のセッションが開始した。今回発売されたアルバムにも収録されてい
る
「ザ・シャーペスト・ソーン」がプロローグとなった。エルヴィス・コステロの説得力のある力強い歌声と、アランの
優しいピアノの音色、その二つが絡み合った瞬間、これ以上何も要らない・・・と思ってしまう程心に響き渡り観客を魅了していた。エルヴィス・コステロがステージから降り立ち観客をも歌わ
せ、曲の後半部分からはマイクを通さずに生声で盛り上げていた。その勇姿には大きな自身とエナジーが漲っていた。
続いて披露された楽曲は
「フリーダム・フォー・ザ・スタリオン」。ピアノを弾くアラン・トゥーサンを見ていて、私はこう
感じたのだ。ピアノの音色だけではなく、この人は喜怒哀楽と言うものが素直に表情にも表れる人物なんだな・・・と。彼の本物の笑顔こそが場の雰囲気を和まし、未来は辛い事ばかりじ
ゃない、希望があって明るいものなんだよ・・・と言ってくれているようにも思えて、観客をとても勇気づけてくれたに違いない。
アルバム・タイトルでもある
「ザ・リヴァース・イン・リヴァー」ではエルヴィス・コステロもギターを持ち弾き語った。アル
バム・タイトルにもなっているこの楽曲は、‘川を逆流させる’と言う意味だけではなく、人と人とが思い遣る事の大切さ・・・という意味も籠めている・・・と、エルヴィス・コステロは語ってい
た。
アンコール3曲を含め、全11曲を披露したスペシャル・ショウ・ケースを間近に体験して感じた事は、このアルバム
『
ザ・リヴァー・イン・リヴァース』には本物の“愛”が溢れかえっているという事だ。正直今までにこれほどまでの様々な‘愛’を感じる事の出来る作品に出逢った事はたかったかも知れない。
哀しい事件があふれかえっているこの現代には、人を必ず幸福にせにさせる事が出来る術はもしかしたら無いのかもしれない。しかし、もしあるのだとしたら、このアルバムの中に詰まってい
る様な‘本物の愛’こそが、唯一人間を幸福に出来る術なのかもしれない。日本盤のみに収録されている
「ザ・グレ
イテスト・ラヴ」を聴くとその思いがより一層強くなるだろう。
エルヴィス・コステロとアラン・トゥーサンのステージは、多くの感動に包まれながら幕を閉じた。二人の大きな愛が詰まった傑作
『ザ・リヴァー・イン・リヴァース』は、音楽を愛する多くの人のみならず、‘思い遣る事の大切さ’を実感したいと思っている人にも聴いて欲しいと思える作
品だ。
(文 磯山みゆき)
■ニューオリンズ・ベネフィット&コンピレーション・アルバム
■エルヴィス・コステロ 初期名盤11タイトル一挙リリース!!