――今までCrack 6でも「千聖」さん名義だったわけですが、7月にリリースされたシングル「Maneuver 6」から「MSTR(ミスター)」名義にクレジットが変わりましたが、これは何か理由があるのですか?
MSTR:名前を変えることが意味があるのかよくわからないんですけど、何か別な事をちょっとしてみたいというのがありまして、「千聖」っていう名前だと今までのソロでやってたりとかしてた時のイメージやPENICILLINのギタリストっていうイメージもひたすら強いとこもあるんで、これはこれでまた別セクションとしてやって行ければ良いなっていう。別な会社作る時に別な会社の名前を付けたみたいなものですかね。
――なるほど。CHISATO時代を経てCrack 6としては今回で2枚目のアルバムとなりますが、MSTRにとってソロ活動はどのような意味合いがありますか?
MSTR:そうですね。たぶんみなさんの中でバンドって集団の中での一人が出て動いているからソロっていうイメージなのかもしれないんですけど、どっちかっていうと別なプロジェクトにただ入ってるだけなんで。何て言えば良いんだろう、会社掛け持ちしてるみたいな感じ。(笑)そういうイメージの方が早いのかな、その場合、表に見えてるのが僕がそこの会社一人でやってるみたいに見えるのかもしれないんですけど、そうじゃなくて、プロジェクトとして動いてるんで、なんかこっちのメンツではこっち、こっちのメンツではこっちみたいなそういうイメージでやってるのかな。
――じゃあ、あんまりそんなには気持ちの中では。
MSTR:うん、やっぱりやる人が変わると変わりますからね。音楽なんて特にそうですけど。その人のクセとかスタイルもありますけど、変わっちゃうことも結構多いんで。決定的にパートも違うしギターだけじゃなくて歌も歌ってて、ボーカルとかになっちゃうと全体的なところも見なきゃいけない分、考える事が多いんで。あんまり考えてはいないんですけど、まぁ、敢えて言うならばソロプロジェクトって言った方が話が確かに早いかもしれないですけどね。
――そうですね。そんなに自分の中では区別がない感じなんですかね。
MSTR:やることがちょっと多いかなって話ですね。(笑)
――なるほど。(笑)前作の1st アルバム「Trinity」はミクスチャー色が強い作品でしたが、今回のアルバム「FIGHT WITHOUT FRONTIERS」ではどのような作品になっているんでしょうか。
MSTR:そうですね、これも音楽的に言うんだったら結構ごった煮ですからミクスチャーなのかもしれないですね。ライブでとにかくノリやすいやつとか、あまり実現不可能な音楽性とかではないっていう感じで。やってて自分達がCoolだなと思うことしかやらないんですけど。今回は「Trinity」が音的にマッチョだとしたら、音数がシェイプ・アップされたかなとは思いますけどね。前半作った曲は、「Trinity」の流れがある曲も何曲かはあるんですけど、後半の方に作ったやつはほとんどストレートに近い曲が多いですね。
――じゃあ、前作に比べて・・・。
MSTR:前作はループとか音色がたくさん入っているっていうか、逆に言うとあの曲は当時の「Trinity」の中で必要な何曲だったんだけど、今の「FIGHT WITHOUT FRONTIERS」に関してはあんまり必要がないとかあったんで、今回はほとんどドラム、ベース、ギター二本位しか入れてない曲とかあります。
――シンプルな曲が増えているという感じなんですね。
MSTR:そうですね。そう言った方がシンプルかな。
――今回のアルバムタイトル「FIGHT WITHOUT FRONTIERS」はどのようなところから付けたんでしょうか。
MSTR:基本的に時代、時代を背景として、その時代に何が流行ったかとか、何かが良かったか、何が話題になったかとかっていうのがあるんだけど、そういうのがその時でしかないネタだったりするんで。ま、露骨にね、「ペ・ヨンジュン」とかアルバムタイトルにするとすごい変じゃないですか。(笑)
――(笑)
MSTR:前回の「Trinity」は特にプロジェクトの感じで企画色が強かったんで、映画の「マトリックス」からヒントを得たのが多かったんですけど、今回はまたちょっと変えて。
今、イラク戦争とかの戦いを見てると昔みたいな戦い方しなくなって来て、もう襲撃はありーの、爆弾テロありーのみたいなメチャクチャな戦い方になってて、結構、仁義なき戦いみたいになって来てる。その戦い方を見ると、今の日本でもそうだけど複雑な社会構造と同じ戦い方って言うか。
向こうは宗教も入ってるし、完全に一緒じゃないですけどね。
色々と世界の状況も乱れてて、結局、利権の問題とか全部考えると、何が正義なのかどっちが味方なのか、どっちが黒か白かもわからないような、こういう時代のことを若干嘆いて歌ってる曲も何曲かあったんで。
マイケル・ムーアじゃないんで、それをやたらそれを歌うつもりはないんですけど。(笑)
そういうのと自分達の社会構造っていうと言い方がちょっと複雑になるけど、みんな生活の回りにあるものの何かとの戦いかもしれないし、誘惑が多かったりとかして負けちゃってる自分があったりとか、そういうのと照らし合わせて、自分達の精神的な葛藤とかも全部含めた意味での「前線なき戦い」。
「FRONTIERS」というのは、「front line」のことですね、開拓っていう方向じゃなくて。
前線がないところでどう戦うか、ゲリラ戦みたいな状態でどう戦うのかっていう、それが人生だったりとか、色んな比喩として例えられることなんでしょうけど、それが今回のタイトルになっています。
――「FIGHT WITHOUT FRONTIERS」のトータルコンセプトはそのタイトルに込められているということですね。
MSTR:それも結構ありますね。まぁ、かと言って歌詞見て「そう繋がるんだ」とか、そういう決まりはあんまりないアルバムはなんで。
――じゃあ、曲的には自分の中で出てきたものを作ってるってことですよね。コンセプトっていう形では作ってない感じですか?
MSTR:そうですね、アルバム自体は1年かけて作ってるんで、最初の思惑とたぶん後半の思惑は変わって来てるのは事実なんですね。極端な話、マンガでよくあるコイツが主人公って言って後半で別なヤツが主人公になっちゃってるみたいな、そんな感じに近いかなみたいなのはあるんですけど。
でも統一してこういうことは言えるなと思ったし、大げさに言っちゃうとそれは全体的な俺の人生の課題でもあるから、そういうことも含めて今回タイトルをこの「F・W・F」(「FIGHT WITHOUT FRONTIERS」略)にしました。
――なるほど。今回のアルバム中で苦労した曲っていうのはありますか?
MSTR:全部、苦労しますよ。
――あっ、そうなんですね。
MSTR:楽なのないですね。
――じゃあ、全部・・・。
MSTR:うん、「Trinity」の方がやっぱりボツ出しが多かったんで去年ほどじゃないですけど、今年は結構みんなOK出してくれる率が多かったんで。
――結構いつも作曲とかされる時は苦労するんですか?
MSTR:しますよ。
――あんまりサクサクとは出来ない感じ。
MSTR:うん、まぁサクサク出来た時っていうのは、もう元々頭の中にあるんでしょうね。まぁ、よく言う降って湧いて出て来てるみたいな、降臨したみたいな感じの。ちょっと大げさだけどポッて湧いた時に出て来てるヤツだったら速いですよ。それだってまとめれば良いだけだから、みんなに聴かせるのをパソコンで作ったりとかで済むだけなんで。ただ何作ろうか悩むところから始まると全体的にかかるんで、あれも作りたいこれも作りたいってのが、いっぱいあれば良いんですけどね。さすがにいっぱい出しちゃってて、どれが良いかな次とか思いながら作ってるところもあるんで。
――えぇ。
MSTR:そして今回テーマとしてもう一つあるのが色んなカルチャーを混ぜたくって、「Maneuver 6」とか「ROCKETEER」がそうなんだけど、「Maneuver 6」はサーフィンの歌だったりするわけで、後「ROCKETEER」とかはドラッグレースとかあぁいう車のレースとかをイメージしたりとか、何か全体的にそういう音楽以外のいろんな文化、カルチャーをちょっと上手く歌と混ぜられれば良いなっていうのをイメージしたりとかしましたね。
――それは例えばサーフィンとかもその時はMSTR自身も興味を持ってるものなんですか?
MSTR:うん、サーフィンのManeuverっていう軌道だったりとか、ライディングとかが、たまたまTVでやってたのを見ててアクティブで面白かったりとか、知り合いにも何人かサーファーがいたんで題材にしても良いなって思ってて、いわゆるロック色の強い、「ダイスを転がせ」とか「やっちまえ」とかそういう訳わかんない歌詞とかいっぱい昔からあるんですけど(笑)、もうちょっとこうテーマがちゃんとあるそういう面白いカルチャーを取り上げたやつとかは、あんまり作ったことがなかったりとかするんで。後は「ROCKETEER」とかスピード感とかあるなぁと思ったんで、アクセル全開なところに繋がるようなイメージをモチーフにして曲を作ったってのがありますね。
――なるほど。それではちょっとだけ話が変わるんですが、今回のレコーディング中の面白いエピソードがあったら1つ教えて下さい。
MSTR:長期間に渡ってやってるんであれなんですけど、大概、プロデューサーの重盛さんにギタリストも兼ねてやってもらってるんですけど、ギターを弾いてほしいんですけど、弾いてくれないんですよね、全然。(笑)
――え?(笑)
MSTR:全部、俺にやらせるんですよ。何でだって聞くと、「俺は別にプロデューサーだから良い」とか言って、全然やってくれないんですよね。そこがちょっとイヤでしたね。(笑)イヤでしたねって、面白いエピソードでも何でもないですね。(笑)
(一同笑)
MSTR:スローな曲とか綺麗な曲とかのコードストロークとかアコースティックギターの感じとかはやって頂いたんですけど、激しいのとか全部、僕がやったんですよ。
――そうなんですね。(笑)
MSTR:全然やってくれないんですよ。一曲目、二曲目、全部僕ですよ。(笑)
――あ、そうなんですか!(笑)
MSTR:それでも歌ってギター弾いて、もうベースとドラムとギターをいっぺんに録っちゃってるんで、ほとんどオーバーダブ以外は全部トータルでダーッと弾いて、レコーディングもかなり短くやってるんですよ、どっちかと言うと作る方に時間をかけてるんで。
――えぇ。
MSTR:録る時は結構早いんですよ。一日何曲かもう一気にやってドンドンドンって、大体二日位でベーシックは録り上げちゃうんで、ギターまでは。
――えぇ。
MSTR:それで歌詞も考えながらやってると・・・って、グチじゃないですけどね。(笑)
――(笑)
MSTR:ディレクションするのも大変なんですけどね、確かに。「シゲさんお願いしまーす」って言うと「えー!」っていう感じで「ヘヘヘッ」って、「ヘヘヘ」じゃねーよお前、仕事だよとか思うんですけどね。(笑)ヒドイ場合はそういう感じでしたね。
――ハハハ(笑)
MSTR:それと、「FIGHT WITHOUT FRONTIERS」とかの曲を作ってる時にプリプロダクションが出来たのが結構ギリギリで。ドラムのKENT君を捕まえに行って聴かせたのが前日で、全然覚える時間がなかったみたいで結構アセッてましたね。(笑)
でもやっぱりスターッと叩けちゃうところが凄かったですね。「Maneuver 6」の時はドラムはワンテイクかツーテイクでOK出ちゃったんですよね。
――そうなんですか。
MSTR:凄いですよ。「Maneuver 6」とか勢いがあってドラムとか凄いカッコ良くって。
――いつもアルバムで必ず一曲、みなさんで録音するのがあるじゃないですか。
MSTR:あぁ、変な曲ですね。
――(笑)あのことはどうなのかなと思ってたんですけど。
MSTR:あぁー、やりましましたね。ソロの1stの「ORGANIC GROOVER」ってアルバムからずっとあぁいう傾向のやつがあったんで、あの時代はすごいセンセーショナルで、曲自体はカッコイイんだけど、何か面白い感じに歌詞を載せてみようって当時プロデューサーの人に言われて、最初は違和感があったんですけどね。もはや定番となりつつあるっていうか、もう何年かもやってるから。PENICILLINの方もそういうので結構影響されて曲を作ってるのもあったりするから、逆に言うともっと面白い事したくなっちゃうんでしょうね、刺激がほしくなって。で、今回はやたら色んな人に出てもらおうと思って、もう気づいたら全然ただの友達とか内輪だけだったんですけど。(笑)
――(笑)
MSTR:でもみんな結構忙しい人達なんで、集めるのは意外と大変だったんですよね。
――あぁー。
MSTR:後ね、何をどこ歌って貰うかってのを割り振るのが大変でした。どこ喋るのかとか。喋ってるのに関して言えば、アウトテイクがもっといっぱいあるんですよ。
――あ、そうなんですね。
MSTR:全部、切って貼ってこのタイミングでやってくれとか。実はあれ結構、細かいんですよ。順番メチャクチャになったりとか。
――じゃあ、意外とあれは大変なんですね。
MSTR:あぁいう、一見くだらないのを作るのが一番大変ですよ。
――(笑)そうなんですか。
MSTR:ほんとに良いのは、ダーッてやった時に面白いのがあって、ドンって全体的にありゃー良いんですけど。面白いのはたぶん10分録ってる中で良くて3ワード位。なきゃー全然ないし。30分あって1個しかなかったなんてこともあるから。大変っすよ、結構。それを探してこれだって抜き出して。
――すごい地道ですよね。
MSTR:まぁ、台本作ってやるのが良いのかどっちかですね。でも皆、役者さんじゃないから台本作ってやるのもどうかと思うし。自然の流れで面白い方が良いかなと思って。
――今回のアルバムでのみ新しく試みた点とかはありますか?
MSTR:さっきとちょっと被るところがあるんですけど、ループも何にもない普通のストレートのロックをやった曲があるっていうのがまず、ちょっと魅力的で、まぁ、当たり前なのかもしれないんですけど。もちろん前回もループするのもあるんだけど、思いっきりストレートだなと思ったのは今回初めてだな、「1996」とかそうですね。後、前回よりは体調も崩してないし何かこうスムースに行くのかなと思ったら、いろいろ大変だった事があって、それでちょっとなかなか前に進めなかったりとかもあったりとかしたんですけど。それでも強行突破で進んだんで、出来て良かったなって思いましたね。
――Crack 6ではボーカリストでもあるわけですが、歌を歌う時に心掛けていることとか、歌うことは自分の中でどういう意味があるのかなとか教えて頂けると。
MSTR:歌うことは心掛けている事に関しては、歌自体がフィジカルな楽器なんで、体のメンテナンスをするのが非常に大変ですね。ちょっとでもダラけたり、風邪を引いたりとかすると、もう一発でダメになっちゃうんで。後、やる気がないとか。ま、そんなことはないんですけど。(笑)疲れてるとするじゃないですか、同じ曲を一生懸命、歌っても何か疲れた声なんですよね。なるべく疲れないようにしなきゃいけないんで、ギターとかだと何かあんまそういうのがないんですけど、僕の場合は。楽器でも何でもそうですけど、精神的に変な状態になってたりとか良い状態だったりすると、やっぱり音が変わって来るんですよね、ただギターとかはわかりずらいだけかもしれない。
歌はやっぱり思いっきりわかっちゃうんで、メンタル的な部分も含めて調整して行かなきゃいけないとこは。でも作品として残るわけだからやっぱり聴いてて良いなと思ってもらいたいわけで。
――歌のはやっぱり好きなんですよね?
MSTR:好きですよ。楽しいですけどメンテナンスは大変。(笑)
――(笑)
MSTR:ギターは意外とこうひっくり返ってやっても、多少、寝ぼけてても弾けちゃうんで。(笑)
――あー、歌は寝起きだと声出ないですもんね。(笑)
MSTR:出ないですね。後、起きてる方が良いんですよ。体が良い状態になってる時の方が後から聴いても良いし飲み込みも早い。例えばすごい徹夜しちゃって歌って良い時もたまにはあるけど、ほとんどないんじゃないですかね。後、酒とかタバコとかでやられちゃって歌って、良い声が出るかどうかはまた別問題ですけども。酒もタバコもやらないんでそこら辺は救われてますけど。
――なるほど。それではMSTRから見たCrack 6の魅力はどんなところだと思いますか?
MSTR:うーん、プロデューサーの重盛美晴の気まぐれと俺の一生懸命、踏ん張ってる頑張り。
気まぐれと踏ん張りと根性で乗り切ってるところかな、簡単に言っちゃうと。(笑)
――え!そうなんですか。(笑)
MSTR:えぇ。(笑)まぁ、欠席裁判で申し訳ないんですが(笑)、すごくバランスが面白いと思いますね。俺がすごいせっかちなんですよ、物事に対する捉え方でも早くこうしないとダメだとか、答えを早く出せとか。
で、対称的に重盛さんが非常にじっくり考える人なんで、それで丁度普通のスピードになるみたいな。俺が焦ってるとしてたらシゲさんが「えー、別に良いんじゃないの〜」みたいな、そのバランスがね、良いのか悪いのかわかんないですけど。(笑)
――二人一緒だからこそ出来る感じですね、それは。
MSTR:そうですね、Crack 6として非常に面白いところはありますね。
――じゃあ、先程出てきた重盛さんを含め、自分以外のメンバーを一言で例えるならどんな感じでしょう。
MSTR:うーん、このプロジェクト自体が重盛美晴と俺以外は基本的に固定ではないんで、1stシングルのドラムとベースを弾いてもらったのはDragon Ashの二人だったり。最初っからこれで行くって決めてやってるわけじゃないんで。シゲさんに至っては非常に気分で動いてる感じなんで、天気のようですね。機嫌が良いとすごいですよ、晴れ渡ってるように綺麗ですね、機嫌が悪いともう嵐のようですね。(笑)
――(笑)
MSTR:この嵐をいかに晴れさせるかが俺の仕事だから。
――(笑)普通って反対な感じがするんですけど。
MSTR:逆ですね。たぶん向こうは向こうで逆なんですよ。俺の嵐と俺の快晴の状態が俺は俺であるみたいですけどね。
――じゃあ、重盛さんに聞いたらまた違う意見が出て来るかもしれませんね。
MSTR:あぁー、たぶん全然違うと思いますよ、全く逆でしょうね。
――なるほど。
MSTR:たぶん何でもそうなんですけど、エンターテイメント事業っていうのはある程度、好きじゃないとやれないところもあると思うんで、基本的には自分達が楽しくやってますね。ただ面白い奴を集めてやりたいんですよね。固定しすぎちゃってガッチリ行くのも良いんですけど、野球チームと考えてもらえば良いんだけどチームを強くするのに別の選手がいるんじゃないですか、代打がいたって良いんだけど、そういうパターンで行ききるパターンと、そうじゃなくてこのチームじゃなくちゃダメっていう、カッチリしたのはもうやってるんで、こっち側で何かちょっと色んなチームで出入りしているのが面白い。だから極端な話、次のアルバムではパーカッションがいるかもしれないし(笑)、ダンサーがいるかもしれないし。あんまりガチっと決める時が来るのかもしれないけど、無理して決める事はないみたいところはありますね。
――MSTRの音楽を作る上でのこだわりとかがあったら教えて下さい。
MSTR:聴き手の人の捉え方にもよると思うんですけど、やっぱり自分だけしか気持ち良くないような音楽とかは作る気は別にないし、みんなが楽しんでる雰囲気によって、こっちに伝わって来る雰囲気でまた自分も楽しむみたいな感じなんで、なるべく大勢の人が良いなと思える歌が作れれば思ってますね。
後は自分がやりたいことをどこまで妥協なく出来るか、それもせめぎ合いですけどね。
でも大概、俺は万人の意思と一緒だと思ってる位なんでね、基本的には。(笑)
俺だけじゃないっていうのを持ってると、それも一人よがりな話なんですけど、自分の思ってることをやって行きたいなと。
ある種、川の流れのように行くところを、無理やり逆らってやることも別にないとは思うんですけど、曲に関してはね。
昔はそれがすごいイヤだったけど、今は色んな血が入って、そんなつもりで作ったんじゃないんだけどって思う曲があっても良いと思うんですよね。
色んな人達の考え方を更に吸収して、次の作品の時にはもっとそれが自分に活かせるようになりたいですね。
――PENICILLINのギタリストとしても活動されていますが、PENICILLINでの活動と自分の中でCrack 6での活動はどのように切り分けていますか?
MSTR:切り分けてるっていうか心掛けてるってのはあんまりないかな。
メンバー同士で話し合いながら、これに対してどうやって行こうとかを考えながらアルバムを作ります。
意外とみんな大人なんですよ、面白いんですよね。
長年やってる割にはあんまり変なエゴは通り過ぎてるっていう感じですね。
そう言った意味ではむしろ一番エゴがあるのは俺なのかもしれないですね、音楽的にはね。
話が前後するんですけどCrack 6を始めた時に事務所の人にギターが楽しい音楽を作ってほしいって言われたんですね。
確かにギターが面白い曲っていうのは最近あんまりない、70年代とか80年代とかのアーティストはギターが印象に残るバンドが多かったけど、
最近はあんまり見ないんで、そういうバンドを作るのがきっかけだったんですね。
さっきの話とちょっと矛盾するけど、歌とか細かい事ばっかり考えちゃってて、そんなのよりもギターがカッコイイから良いじゃんとか昔は結構あったんじゃないかなっていうのがあって、そういうのを作ってみないかっていうのが最初のきっかけだったんです。
それがすごくPENICILLINに影響したのは事実なんですね。
「赫赫 (カッカク)」って去年出したPENICILLINのアルバムは「Trinity」のすごい影響を受けてると思うんです。
「Trinity」よりも「赫赫」の方が先に出てますけど、実は「Trinity」の方がちょっと早めに作っててそこら辺ですごい影響を受けてる。
20代の前半の頃はそこでしか考えられなかった事を、30代過ぎるともう色々やって来ちゃって、こういうもんだろう音楽っていうのはって王道しか考えなくなっちゃってたから、そこら辺の頭の固い部分を、大分直したってのがCrack
6には非常にあったんで、一人のミュージシャンとしてもう一回、見直す良い時期だったかもしれない。
――じゃあ、PENICILLINもやってCrack 6もやったことはどちらにも良かったってことですよね。
MSTR:良かったんですよね、たぶん。
Crack 6には、すごい影響を受けてましたね。
PENICILLINとかもそうなんですけど、それまでのアルバムが良くなかったわけじゃないんですけど、もっともっとこう道標がしっかりと出来て、道がはっきり出来たって感じ、今まで薄かったものがバチッとして、ものすごく迷いがない。
方向は間違ってないって自分の中で思えることが、むしろ時代が自分について来たなみたいな。(笑)
「俺の時代到来」みたいな、そういう風に思える位の良い自信に繋がるというのは、やっぱり良いプロジェクトなんじゃないかなって思いますけどね。
――Crack 6でも積極的にライブ活動を行っていますが、ライブ中に一番、サイコー!と感じる瞬間はどんな時ですか?
MSTR:やっぱり音楽でも何でもそうなんですけど、ツボにキチッとハマった時には良いものだなと思いますね。
ライブとかは全部がその瞬間でしかないものだから、CDと違って放っておくと全部流れて行っちゃうものなんだと俺は思うんですよね。
だからライブ自体を、その時の雰囲気全部を聴き返すことが出来ない訳ですよ。
俺は絶対、PENICILLINやCrack 6を見ることが出来ないのと一緒で、ビデオとかで見ても所詮、全部のフィルターがかかったものしか見えないし、その時のものをその雰囲気で味わうってことはその時でしかないわけだから、それがライブの良さだったりするわけで。
例えばギターソロがダッて綺麗にキマって、すごい綺麗にハマッた時はうれしいし、歌ってて、ここの歌い方がしっかり出来て、みんなが喜んでたら良いなとか、向こうが口ずさんでる姿が見えた瞬間に、自分とそれがリンクして歌ってたりとかする時はうれしいですね。
Crack 6の場合、特に音楽で遊べることをしたいんで。 非常に不思議なのがライブって洋邦問わず、この曲はこの曲までやっておしまいってのが多いんですね。
そうじゃなくてライブでは、ダラけない程度の遊びってのもあった方が良いんじゃないかなって思うんですよね。
例えばここは120小節の曲だからそれでおしまいとか、そうじゃなくてそっから先は何か面白いものはないの?みたいなのとか、間のところ何か掛け合いがあったりとか、そういうところがコンサートならではの、その瞬間、その瞬間の面白い事があると思うんで、音楽で遊べるやつらを集めてやりたいなとは思ってますね。
――今後、新たにチャレンジしてみたいことはありますか?
MSTR:具体的にはもっとイベントとか出てみたいですけどね。
――対バンものとか・・・。
MSTR:それはしょっちゅうやってるんですけど、もっとイベント色が強いものとか。何かついでに色んな音楽が見れるんで面白い、俺が面白いってだけかもしれないですけど。(笑)
――なるほど。(笑)
MSTR:色んなスタイルのバンドが見れるから面白い、後、面白い価値観を持ってる人達とかとも会ってみたいかもしれない。
――人との出会いとか色んなものとの出会いとか・・・。
MSTR:面白ヤツとは会いたいですね。
――え?そうなんですか?(笑)それでは音楽からちょっと離れるんですけどMSTRにとって宝物はなんでしょう。
MSTR:宝物・・・「金」とか言ったら相当引かれるんだろうなぁ。
(一同笑)
――それは・・・。(笑)
MSTR:えー、時間ですかね、時間が一番大事ですよね。 だらしないなぁ自分で思うんですけど、そこら辺をキッチリやれれば良いですよね。
――自分の作品以外でお薦めのアルバムを1枚推薦して頂きたいのですが。
MSTR:最近はあんまりCDをよく聴く事がなくなっちゃったんですけど、トータル的に良いなと思ったのはグッド・シャーロットかな。
これは良かったですよ、メチャメチャPOP、後、曲も完成度が高いっていうのかなドラムにも迷いがないしね。
パンクとは思えない・・・パンクだからなのかな、すごいPOPだし、演奏が上手いです。
最初は最近のテクノロジーの進化で上手く見せてるのかなって思ってたんだけど聴けば聴くほどちゃんとしたプレーヤーだなと、ものすごくしっかりしてますね、演奏も良いし、曲も良いし。
――これがお薦めということですね。
MSTR:グッド・シャーロットはたぶん万人にお薦めです。
――最近、音楽以外でハマっているものがあったら教えて下さい。
MSTR:色んなのにハマりたいんだけど、ハマる時間がないだけなんですけどね。ハマりたいんだったらもう一回、何でも良いんでスポーツやりたいですね。
――それは特には何ってことはなく。
MSTR:うん、ライブ以外で汗かく、逆にヨガとかあぁいうのでも良いかもしれないけど。最近、何か体が思うように動かなくなって来てるんですね、20代に比べると。メッチャクチャやっても次の日は平気だったんですけど、寝りゃー何とかなるって。最近、そうもいかないなってのがあって、ちょっとオッサンくさくってイヤなんですけど。(笑)
――(笑)
MSTR:なんかこう思うように頭が働かなかったりする時があって、ちょっとイライラするんで、もうちょっと効率の良い考え方にしようと思って、システマチックに考えることを努力するように、ここ一年位思い始めてるんですけどね。何でそう言ってるかっていうと、そう言わないとたぶん性格上シッチャカメッチャカになるんでそうしないとイカンかなって、自分の中で今、心掛けてるから逆に言うとスポーツは良いかもしれないなと思って。
――じゃあ、一応スポーツ全般・・・。
MSTR:それが意外とヨガみたいな、こういう静かなやつも良いのかもしれない。でもすっごい真面目にストレッチとかやると結構疲れるんですよね。体動かしたくってしょうがないですね。昔は違ったんです。
――え?そうなんですか?(笑)
MSTR:一秒たりとも動きたくないってタイプだったんですけど。(笑)
――そうなんですか。(笑)
MSTR:うん。
――えー、何か意外ですね。それでは最後にみなさんに向けてメッセージをお願いします。
MSTR:さっきの話じゃないですけど、時間ってすごい大事で、その時の瞬間はみんなその時しか味わえないものだから、今回の「FIGHT WITHOUT FRONTIERS」も2005年の1月26日に出るからこういう音楽なんだなって思えるような、人によっては思い出になったりするわけだし。
それがきっかけで変わる人もいるわけなんで、そういう人がなるべくいることを僕は願うだけなんですけれども。
昔、僕がすごく尊敬するミュージシャンの人が言ってたんですけど、その人もやっぱりその時の記憶の中に入って行ける音楽を作っていけるっていうことは、すごく幸せなことなんだって言ってました。
これを聴いて良い方向に自分が変わって行ければ、後はライブ来て体感して貰えれば良いと思うんですけどね。
俺も学びつつなんで、まぁ、とにかく転がって行きましょう、止まる気はないって感じですね。
――ありがとうございました。