デビューアルバム「クリスティーナ・アギレラ」が全世界で2500万枚のセールスを記録。グラミー賞最優秀新人賞を受賞し、ブリトニー・スピアーズと並んで、世界中から注目を浴びるカリスマアイドルとしての地位をデビュー1年で不動のものにしたクリスティーナ・アギレラ。しかし、「アイドル」と呼ばれることに嫌気がさした彼女は、2002年に発表したセカンド・アルバム「ストリップト」で、大胆にも「素っ裸」になってしまった。これぞまさしく豹変。音楽に対する価値観だけでなく、一部雑誌グラビアではセミヌードも披露したほどだ。ワイルドでセクシーなクリスティーナ・アギレラ誕生の瞬間は、あまりにも衝撃的だった。 当然の如く、世界中で賛否両論が巻き起こり、是非が問われることとなった。そこそこ売れてるアイドルや人気が低迷している歌手が、テコ入れで「アイドル脱皮」という冠を掲げてリセットするケースは、過去にかなりの例を見ている(あえて名前は出さないが、そのほとんどは致命的失敗に終わっている)。クリスティーナ・アギレラの場合、上記に挙げるケースに当てはまる歌手ではなかったが、彼女は実行した。彼女の目指す音楽の方向性は、じつはデビュー当時から決めていたというではないか。蓋を開けてみれば、賛否両論も絶好のネタとなり、彼女への注目度は高まるばかり。シングルカットされた珠玉のバラード「Beautiful」が大ヒットし、最終的に彼女が新たに作り出した音楽への評価はうなぎ上りとなり、アルバム「ストリップット」は全世界で1000万枚のセールスを記録。「素っ裸」になった彼女が、見事なまでに"アーティスト"として認められた。 4年ぶりとなる新作「バック・トゥ・ベーシックス」は、1920〜1940年代のジャズ、ソウル、ブルースなどをモダンによみがえらせている。「これはコンセプト・アルバムであり、大胆で、未来を創るものよ。」クリスティーナはこう宣言したそうだ。プロデューサーには、前作に続いてリンダ・ペリーの名がクレジットされている。さらに、ヒップホップ界の重鎮、DJプレミアも加わっている…うーん、本作でもダーティーな一面は残してくれてそうだ。ファースト・シングルとして発表された「エイント・ノー・アザー・マン」…とにかくかっこいい!"革新的な音楽"という意味では多いに的を得ている。今のポップアイコンと呼ばれるアーティストで、ここまでの実験的な音作りが出来るのは、彼女だけかもしれない。「ヴィンテージ&モダン」という、あまり耳にしないコンセプトが、現代の音楽シーンにどのような影響を与えてくれるのか、じつに楽しみで仕方がない。 彼女が求めているのは、チャートNo.1や賞を獲得することではないだろう。もちろん、それらは付加価値であり、あとからついてくるものである。正直、「バック・トゥ・ベーシックス」のコンセプトを耳にしたとき、作品次第ではグラミー賞作品賞も夢ではないのでは、と先走った考えがよぎったのは私だけではないと思う。彼女の本質としては、いかに完璧主義を貫き、いかにその成果をファンに受け入れてもらえるかだろう。歌い手だけが満足しているような一方的な代物ならば、とうの昔にファンは離れているはずだ。だからこそ彼女のアルバムを耳にするときは、聴く側も「素っ裸」でいなければいけない。4年の歳月を費やして完成させた彼女の情熱に、真っ向勝負してみようじゃないか。
|
着うたサイト「公式RサウンドNEOWING」にて、ファースト・シングル「エイント・ノー・アザー・マン」の着うたを先行配信中!今すぐアクセス! (NTTドコモ、AUサイトのみ) |
(text by ohishi)