谷崎潤一郎原作を現代版として新たに映画化された『刺青』。今回、この映画の中で掘師・来栖精像役としてご出演の弓削智久さんにお話を伺いました。
■まず台本を読まれてどんな印象を受けられましたか?
役を理解をする為に、何度も台本を読みました。谷崎潤一郎という大作だったし、官能的な部分を描くことにプレッシャーはありましたね。原作も読んだんですけど、脚色が強かったので新たな作品のつもりで挑みました。
■映画の中では男女の立場が逆転しますが、演じる上で弓削さんはS派、M派、どちらだったと思いますか?
Sになりがちだったんですが、監督から言われて途中から感情を内に秘めて演じました。今まで自分のやってきた芝居っていうのは出したいだけ出してて、自分でもアドレナリンが出すぎてウアー!!(笑)みたいな感じで、それからしばらく立ち直れないこととかあったんですけど。
途中で吉井怜さんがSになってきて(自分が)Mになる、そういう主従関係みたいなのがよく出てるんじゃないかと思います。そうですねー、自分自身はMです。(笑)
■恋愛ではどちらなんですか?
最初はSなんですけど途中で逆転して。迎えに来てって言われたら、迎えに行くし。
■正に映画みたいな感じですね(笑)暗い場面が多いですが、どんな気分で演技されていましたか?
密室のシーンが多いので、多少は観る方に圧迫感を与えるかもしれない。でも、逆にそれを楽しんでいただければと思います。一回だけロケがあったんですけど、その時はすごく開放的でしたね。
暗い中でやってるんで気持ちが下がってくるんですけど、それに慣れだすと(気持ちが)上がってきたりして、撮影中のその二週間は不思議な時間でした。もしかしたら監督もそれを狙ってたのかもしれませんけど。
佐藤監督はすごい変わった不思議な魅力をもった方で、エネルギーをもらいましたね。
■どんなエネルギーですか?
「カット」の声で、今の演技が良かったかダメだったかが分かるんです。中盤になって良い「カット」が増えてきて、励みになりましたね。二人での演技だから不安もあったけど、佐藤監督に引っ張ってもらいました。
■以前全身に刺青を入れた青年の役をやられていたり、今回は彫師と、刺青に縁があるようですが、元々刺青に興味はあったんですか?
高校生の時から刺青を入れたいなと思っていました。男の象徴のような気がして。一番男らしいと思ってたのが和彫りだったんで、この役が来た時絶対やりたいなと思いましたね。撮影中は彫り指導の方の先生に「このまま練習すれば人の肌に彫れるよ」なんていわれて、すごくうれしかったです。
■入れてみたい柄はありますか?
鯉とか龍とかがいいですね。実際、今は入れないですけど50歳くらいになったら入れたいですね。孫ができるくらいになったら、背中にでっかいのとか入れて。頭も禿げてきたら、この辺に(頭を指して)漢字とか入れたりして(笑)
■内向的な主人公ですが、実際の弓削さんはどうですか?
僕も最近はあまり外に出なくなってるかも。(笑)以前は一人旅とかしてたんですけど、今は趣味がDJで、レコードを8時間くらい一日まわしてたりするんです。友達と遊ぶときは、普通だと思うんですけど。
■これから演じてみたい役はありますか?
家庭をもった役と、悪役が多いので良い人もやりたいです(笑)全く喋らない役、意図して喋らない役とか。
■低い声が印象的ですが、意識したことはあるんですか?
役に肉付けしていく時って、一番最初に来るのは声なんです。来栖って結構陰湿じゃないですか。陰湿だし内向的だし。めったなことじゃ笑わないし。そういう人間が出す声ってどんな声なんだろうなって、色んな人と相談して決めました。
■吉井さんとの撮影はどんな雰囲気でしたか?
いい雰囲気でしたよ。でも、役柄でのお互いの立場を考えて作品についてはあまり話さないようにしてました。
(吉井さんは)ちっちゃい身体なんだけど、大きい心で周りのことをよく考えている人でした。掴みどころが無いけど、すごく不思議な魅力を持った人だな、と思いましたね。言えるのはすごい魅力的な人だってことです(笑)
■10年後どういった役者さんになりたいですか?
人の心に引っかかる役者になりたいと思います。あとは自分の心に嘘をつかない役者になりたい。技術だけじゃなくて、相手の心にぶつかる役者になりたいなあ、と。それって一番難しいと思いますけど、それが今のところの目標です。
このインタビュー中に、何度か地震が。「実は地震苦手なんです」と意外な一面も見せてくれた弓削さん。長く揺れていたにも関わらず、がんばって答えてくださっていたのが印象的でした。ありがとうございました。
本作「刺青 SI-SEI」は、弓削さんにとっても大きな転機となる作品となったようです。今後の活躍がますます期待されますね。
●刺青 SI-SEIの舞台挨拶で吉井怜さん、弓削智久さんに会える!
「刺青 SI-SEI」2月25日よりテアトル池袋にてレイトショー
※初日の舞台挨拶は、弓削智久さん、吉井怜さんと佐藤監督を予定。 |