明治維新直後、欧米に追いつけとばかりに近代化の進む日本。政府は軍事力の近代化を図るために西洋式の戦術を取り入れることを決断する。日本政府に雇われてアメリカからやって来た米国将校のオールグレン大尉(トム・クルーズ)。南北戦争の勇士ながら、戦いに虚しさを覚えて苦悩していた彼は、政府と敵対する勝元(渡辺謙)率いる武士一族に惨敗して捕らえられる。やがて彼らの村で軟禁生活を送るうちに、忠義を尽くして名誉を重んじる武士道精神に強く惹かれていく。そして彼自身が見失っていた生き方を次第に取り戻し、彼らと運命を共にし、自らも刀を手にサムライとなって戦いに挑んでいく・・・。
「インディペンデンス・デイ」「パールハーバー」などの"アメリカのアメリカ国民のための映画"的な要素は排除された。決してトム・クルーズを主役として映さず、日本人俳優の存在感を前面に押し出したあたりは、製作陣がいかに日本人を賛辞しているかがよくわかる。言い換えれば、アメリカが本気で取り組んだ日本の歴史映画なのかもしれない。この点については画期的の一言に尽きるだろう。かつて、日本を題材にする映画は、必ずと言っていいほど日本を理解していない矛盾点が指摘されてきた。本作についても、決して例外とは言えないかもしれない。しかし、侍スピリットを継承した一人のアメリカ人の姿が、そういった細かい矛盾点を一掃してくれている。政府に反旗を翻す勝元役の渡辺謙は、トム・クルーズ以上の圧倒的な存在感で、この映画を筋の通った作品にしてくれた。
しかしながら、今のご時世から察するに、本作品を単なる娯楽大作として楽しめる状況でないことは誰もが周知しているところ。かつて日本を攻め、異文化を否定したアメリカが、時を経て、日本の文化を賛辞し、渡辺謙を褒め称えた。今、アメリカは某国の地に土足で踏み入り、かつて日本が味わった状況を繰り返している。我々日本人がこの映画に見出すものは、いったい何なのだろう。良かれ悪しかれ、答えは観た人それぞれの価値観に起因する。侍スピリットの血を継承する我々にしてみれば、このような機会を与えてくれたトム・クルーズに、まずは感謝の意を表したい。 (Text by Ohishi)
|
関連商品
⇒ ラスト・サムライ サントラ ⇒ ラスト・サムライポスター ⇒ トム・クルーズ 関連作品 ⇒ 渡辺謙 関連作品 ⇒ 真田広之 関連作品 ⇒ 小雪 関連作品 ⇒ エドワード・ズウィック 監督関連作品 |