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あの胸が岬のように遠かった 河野裕子との青春(新潮文庫)
永田和宏/著

目次
湖に降る雪ふりながら消ゆ 風のうわさに母の来ること 消したき言葉は消せざる言葉 手を触るることあらざりし口惜しさの わが十代は駆けて去りゆく 青春の証が欲しい さびしきことは言わずわかれき 二人のひとを愛してしまへり あの胸が岬のように遠かった きみに逢う以前のぼくに遭いたくて わが頬を打ちたるのちに わが愛の栖といえば はろばろと美し古典力学 泣くものか いまあざみさえ脱走を おほよその君の範囲を知りしこと 「夏がおわる。夏がおわる。」と 寡黙のひとりをひそかに憎む 今しばしわれを娶らずにゐよ


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