商品説明
その夜から蒼ざめた血のざわめきが聞こえはじめた――森ふかい女だけの館に・・・「ローズマリーの赤ちゃん」をしのぐ衝撃作! クリント・イーストウッド×ドン・シーゲル監督、黄金コンビによる異色の傑作がニューマスターで再登場! ――南北戦争末期、女性のみで自給自足の生活を営む寄宿舎に、足に重症を負った北軍の伍長が運び込まれた。献身的な看病を受けた伍長は徐々に回復するが、世間から隔絶した女だけの世界で欲求不満を募らせる女たちは次第に伍長の魅力の虜になっていく。そして欲望と嫉妬心、競争心に火がついたとき、そこには恐怖の惨劇が待っていた・・・。監督ドン・シーゲル、主演クリント・イーストウッド。「ダーティハリー」を頂点として5本の作品でパートナーシップを組んだ最強コンビの3作目にして、ともにそのコラボレーションの最高傑作と公言する異常性が噴出する一作。イーストウッドが劇中にて他人に殺される唯一の作品 (しかも足を切断され、毒キノコで殺される!)という、非常に珍しくも貴重な一作。ドン・シーゲルとの第2作、「真昼の死闘」撮影中、トーマス・カリナンの小説「欺かれた人々」を読んで気に入ったイーストウッドは、さっそく監督のドン・シーゲルに小説を渡した。シーゲルも同様にこの企画は大きな可能性を秘めていると同意し、映画化が決定。それはそれまで「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン」のマカロニ・ウェスタン3部作の大ヒットとアメリカ凱旋後の「奴らを高く吊るせ!」「荒鷲の要塞」「マンハッタン無宿」等でアクションヒーローとしての地位を確立していたイーストウッド、そしてそれまでB級アクションやプログラムピクチャーのしがない監督だったシーゲルの両者にとって、まったく新たな試み、新境地開拓へ挑戦する野心作だった。内容は、それまでのアクションや西部劇から一転、女性の恐怖を描くゴシック風のスリラー。しかし公開当時、宣伝用のポスターではイーストウッドが銃をかまえ、あたかも南北戦争で大活躍して勝利を収めるようなアートワークで宣伝され、配給元のユニバーサルでは宣伝方針や公開規模などが揉めに揉めた結果、プレミア上映は中止、急に一斉公開され一週間で打ち切られた。足を切断され、毒キノコで殺されるイーストウッドの姿は衝撃的であると同時に、新しいイーストウッドの宣伝の仕方がまったく分からなかったのだろう。配給の姿勢に失望と苛立ちを覚えたイーストウッドとシーゲルだったが、作品の出来には両者とも非常に満足していた。クリント・イーストウッドやドン・シーゲルの作品は、そのネームバリューの大きさからか何故かアメリカン・ニューシネマの範疇で語られることが無いが、本作「白い肌の異常な夜」は、その内容の地味さと同時代性、そして配給元との関係性において、同じユニバーサル配給のニューシネマ「さすらいのカウボーイ」や「断絶」と非常に似通った運命を辿った作品といえる。所謂"呪われた傑作"である。また特筆すべきは、本作撮影中にイーストウッドはドン・シーゲルについての短編映画『THE BEGUILED: STORY TELLER』を撮っている。この短編は後にテレビ放映されたらしいが、次に続く初監督作「恐怖のメロディ」の予行演習的な側面を持っている。事実、イーストウッドが初監督作に選んだその「恐怖のメロディ」は、アクションやウェスタンなどイーストウッドが得意としていた、客を呼べるジャンルではなく、「白い肌の異常な夜」をそのまま受け継いだかのような、女性に襲われる恐怖を描くスリラーである。そのようなことからも、本作「白い肌の異常な夜」は、アクションスターではなく映画作家としてのイーストウッドの原点ともいえる作品であり、イーストウッド自身が最も気に入っている作品の一つである。
特典:
映像&音声特典: 1975年11月12日放送"水曜ロードショー"版 & 1985年1月17日放送"木曜洋画劇場"版日本語吹替音声ダブル収録、メロディ・トーマス・スコットインタビュー、The Beguiled, Misty, Don and Clint、評論家Kat Ellinger音声解説、予告編