海と大地の狭間にある異世界バイストン・ウェルと地上世界を舞台に、世界をつなぐ力“リーンの翼”に招かれた少年エイサップ・鈴木と、ホウジョウ国王女リュクス・サコミズの恋と冒険の物語。
質問1:
『リーンの翼』というのは、概ねの人が子供の頃からずっと持っている「空を飛んでみたい」という夢を実現するために、アニメを利用して作った作品です。それをメカでやっても良いんだけれども、もう少し気分で飛べるようなものをと考えたのが“リーンの翼”という、羽が生える靴を履くと空を飛べちゃうというものです。
そういう靴がどこから出てきたのかという設定については、どうせ作るのなら、完全にファンタジーができるようにと異世界を設定した訳です。異世界の中から生まれたものにすれば、物理的理由を一切説明しないで空を飛べるという便利さもあったんですけどね。
その異世界を『リーンの翼』では“バイストン・ウェル”と呼んでいます。その意味は、「僕らの側に異世界に繋がる井戸があるよ」というような気分で付けた造語です。ただ、バイストン・ウェルという世界がそこにあるものという風には設定しませんでした。人類がいつから知恵を持ち始めたのかは分かりませんが、その人類の知恵とか夢、そういうものが寄り集まって出来た世界だとしています。つまり三次元とか四次元と設定したのではなく、我々が生まれたから出来上がった世界なんだという設定です。100万人、1億人、100京人の夢が集まれば具体的に一つの世界が出来てしまうのではないのかということです。ですから、想いが強ければバイストン・ウェルには行けます。皆さんも時々行っているんですよ。夢を見るという形でね。実際に我々の世界でも、バイストン・ウェルのことは語られています。天国とか地獄とか、神話が語られるのは、実はみんながバイストン・ウェルの記憶を持っているからで、ギリシャ神話のような光景も洪水伝説、大樹伝説といったものもバイストン・ウェルの中にはあるのかもしれません。
『リーンの翼』という作品は、その中でも特に日本人に関わる物語、それと現代、つまり21世紀とバイストン・ウェルは繋がっているではないか? ということを考えて作った作品です。なぜ『リーンの翼』という名前を付けたのかと言いますと、リーンって気持ちの良い音だからです。そういう単純な意味で作ってはいますが、物語は基本的にシリアスな話です。
アメリカだけじゃなくてアメリカに肩を持ってしまうあちこちの国が寄り集まって“無国籍艦隊”というのを作り、各国の軍隊で戦争をするということがなくなった世界。その無国籍艦隊というのが世界の紛争をやめさせるアクションを起こすこと自体が、実は無責任なのではないかということを感じた日本人の少年がバイストン・ウェルに行くことによって、そして“リーンの翼”を履いて空を飛ぶことによって、そしてオーラバトラーに乗って無国籍艦隊と戦うのではなく、彼らは一体何なんだとういうような話をして、最終的に東京湾で何となく戦争らしきものがあって終わるという話です。訳が分からないと思うかもしれませんが、正にそうで、訳が分からないからこそ作品を観て頂くと「へ〜、こういうことになっているんだ」というように感じてもらえるように作っているつもりです。
なっているか、なっていないかは、みなさんの判定次第ですが、僕としてはこんなものでも良いのではないかと思っています。もちろん、ちょっとマズかったかなという部分もありますし、そういう意味ではより素晴らしい『リーンの翼』なり、バイストン・ウェルの話を死ぬまでにもう一回くらい作りたいと思っています。
質問2:
- DVD『リーンの翼 COMPLETE』の発売を心待ちにしているファンの方へメッセージ
富野の作品が嫌いだとか、バイストン・ウェル物語という名前を聞いたことがあるとかないとか、当然アニメが嫌いだという方もいると思うんですけれども、そういう先入観を持っている方にむしろ観て頂きたいと思います。
俗に言うメカものとはちょっと違う、それでファンタジーものなのかというとそれもまたちょっと違う。そういう意味ではそれぞれのジャンル分けされている枠の中にポンとはまるような作品ではありません。「そういうアニメってあるの?」と聞かれたら「はい、『リーンの翼』です」というわけです。騙されたと思って一度観て頂けると嬉しいです。それから、とても大事なことが一つあります。
この作品はアニメだからこう作るという作り方をしていません。
今回も当然オーラバトラーという、人型の怪獣でもメカでもない何でもないっていうものが出てくるんですけど、それもCGで作画してもらっています。そういう手書きの画の部分とCGとの整合性みたいなのはどうとれているのか? あるいはとれていないのか? ということに関しても、他の作品でやっているようにはやっていないつもりです。そういうところは見どころになるのではないかと思いますので、ぜひ一度観て頂けると嬉しいです。